この状況で、人間がフィーナの血を狙いに来ることはない。そのように確信したダレスは中の様子を確認しに行こうとするが、フィーナが身体を抱き締めているので上手く動くことができない。ダレスは彼女に離して欲しいと訴えるが、離れたくないのだろう密着が続く。
本当はフィーナを連れて行くべきだが、流石に砕け散った女神の像を見せるわけにはいかないので、この場で待っていて欲しいと頼む。しかしフィーナは頭を振り、一緒に行きたいと言い出す。彼女の頼みにダレスは嘆息すると、回答を求めるかのように父親に視線を合わす。
「一緒に行くといい」
「だけど……」
「結末を見たいと言い、我々と一緒についてきた。それなら、最後を見せてやらないといけない」
「わかっている」
「なら――」
「心配なんだ」
フィーナの心を傷付けたくないからこそ、真実を見せることを躊躇う。神殿に連れて来る時は「フィーナが願うから」と彼女の意志を優先したが、いざこのような結末を迎えると、感情が許さない。ダレスの本音にレグナスは「過保護」と評するが、まさにこれが正しい。
相手を思い過保護になるのも構わないが、だからといって過保護になり過ぎてはいけない。それは束縛の一種であり、フィーナの意志を阻害してしまう。愛しているのなら共に行き、共に受け止めればいい。そして支えきれないのなら、共に支えればいい――と、レグナスは話す。
「私は、大丈夫。一緒に行きたいと言った時から、覚悟を決めていたもの。どんな結末でも……」
「苦しいぞ」
「平気」
「……強いな」
フィーナの決意に、ダレスは何も言えなくなってしまう。確かに彼女が言うように、神殿に来る時点である程度の出来事は予想できていた。ましてや竜の村にいる時点で髪の色が変化していたのだから、勘がいい者なからこの先に待ち受けている結末を簡単に予想できる。
最初は弱弱しい女の子として見ていたフィーナが、立派に成長している。それが喜ばしかったのかダレスは微笑を浮かべると、一緒に行こうと言葉を掛ける。ダレスからの言葉が嬉しかったのだろうフィーナは力強く頷くと、密着した身体を離し今度は彼の手を握った。


