血の涙を流している女神の像を前にフィーナは恐怖心を抱いたのだろう、フィーナは一度身体を震わせると、ダレスを抱き締めている腕に力を込める。身体を締め付ける感覚にダレスはフィーナのそっと肩を抱いてやろうとした時、彼女の髪の色彩の変化に目を丸くする。
あの時とは違い、確実に変化している。いや、髪の色の変化はフィーナだけではない。周囲にいた者も二人の髪の色の変化に気付いたらしく、ざわめきが部屋全体に広がっていく。
「最終通告か」
「そうだね」
「これで、血の力は……」
「フィーナは、普通の女の子に戻る」
「お前も、そうだ」
「それは嬉しいけど、それ以上に、気配が変わった。父さんも、気付いていると思うけど……」
ダレスの言葉に、レグナスとフィル王子以外がフィーナに視線を合わせる。それは憐れみを含めた視線ではなく、消失を悲しむような視線であった。しかしそれ以上にダレスとレグナスは、彼等の別の心情を読み取る。瞬時に「危険」と察したのか、ダレスはフィーナを抱き締める。
また、レグナスはダレスに視線で合図を送ると、建物の外で待っている仲間のもとへ行くように促す。父親の言葉にダレスは瞬時に頷くと、フィーナを抱き締めながら外へ急いだ。案の定、二人の考えは正しく、多く者が完全に血の力が失われる前のフィーナを狙った。
まだ、血の力が残っている。
なら、一滴残らず搾り取れ。
捕まえろ。
そして、殺せ。
自分達に幸福を与え幸せに導いてくれる巫女として敬愛していたが、裏を返せばこのようなもの。欲望を前面に出し、フィーナに襲い掛かる。だが、彼等の前に立ちはだかったのはレグナスとフィル王子で、特にフィル王子は抜刀し「何をしているのだ」と、大声で叱責する。
「そのようなことをするからこそ、女神は我々を見捨てたのだ。何故、それがわからないのだ」
必死の叫びとも取れる叱責であったが、彼等の耳に届くことはない。血の力が失われることで頭が混乱しているのだろう、一部の者はフィル王子の言葉に反発する。これこそ血の魔力に取り憑かれた結果か、王子が正論を言っているというのに誰も聞き入れようとはしない。


