新緑の癒し手


「ほう、詫びることができるのか」

「本当は、もっと早くに……」

 自分達の無礼千万の行いは、上辺だけの言葉だけでは許されない。だからフィル王子は、レグナスに跪く。多くの者が、フィル王子の行動に動揺を隠せない。フィーナも同等の意見だったのだろう、ダレスの外套を引っ張ると、そこまでしないといけないのか小声で尋ねる。

 フィーナの意見にダレスは頭を振り、フィル王子の行動を止めようとはしない。種族同士の関係を改善したいというのなら、先頭にたって罵倒している神官が頭を垂れないといけない。しかし彼等が素直に頭を垂れるわけがなく、フィル王子が彼等に代わって頭を垂れた。

 ダレスの話にフィーナは、静かにフィル王子の姿を見詰めるしかできない。この行為によって両者の間に存在する明確な壁を取り払われることはないが、第一歩になればいいとフィーナは考えるが、拗れに拗れた両者の関係はこのようなことで改善するほど生易しくない。

 だからといって、自分達の過ちを認めないわけにはいかない。そのことをわかっていたからフィル王子は、レグナスに跪く。一国の王子である自分が跪けば、彼等の気持ちが変わるのではないかと期待し。跪くフィル王子にレグナスは何も言うことはしないが、気持ちは十分理解していた。

「……珍しいな」

「父さん?」

「このような者が、上に立つのは喜ばしい。どうも人間は、自分のことしか考えない者が目立つ」

「信頼は?」

「してもいいだろう」

「……良かった」

 内心、父親がフィル王位を認めるかどうか不安だったのだろう、父親の言葉にダレスは安堵の表情を浮かべる。レグナスにしてみればこのように自分に跪く人物は珍しかったが、凝り固まった考えが蔓延している人間社会の中で、彼のような人物は貴重な存在といっていい。

「ひとつ、宜しいですか?」

「構わない」

「どうして、貴方方が……」

 フィル王子の疑問に、レグナスは簡略的に説明していく。その説明にフィル王子の顔面から一気に血の気が引き、真っ青になってしまう。血の消滅は前々から願っていたが、このように面と向かって言われると全身が小刻みに震え出し、女神の意志が明確に示された証拠。