「そうやって、目に見えるモノから逃避する。いい加減、お前達は真実を受け入れたらどうなんだ」
周囲がどのように見て、どのように思っているのか。また、自分達の行いによって、どのような影響を齎しているのか。自分達が本当に頭がいいと自負しているのなら、その目で確かめてみるのがいい。そして真の意味での現実を痛感し、己の無力さを痛感しないといけない。
女神の力に守られる、か弱い存在。
そう、レグナスは人間を評価する。
それについて痛感しているのだろう、珍しくナーバルからの反論がない。多少であっても自覚していることにレグナスはほくそ笑むと、どうして確信に至ったのか話していく。ひとつの例に上げられるのは、ダレスが感情を表面に出しても竜の姿に変化しないというもの。
また、ダレスの話では巫女の血を引いている象徴である緑柱石(エメラルド)の髪が、時折竜本来の髪色――黒色に一時的に戻る時があるという。そして決定的といっていいのが、巫女そのものであるフィーナの髪の色さえも一時的に本来の髪の色に戻るという、不安定な状況にあった。
「そ、そんな……」
「これが、真実だ」
「なら、あいつが無表情だったのは……」
「お前達……というより、聖都の民に迷惑を掛けないという、息子なりの気遣いだったのだろう。本来、竜は特殊な術を使い現在の姿と取っている。しかし息子は巫女の血の影響で、術が不安定なのだ。特に感情が高ぶると竜の姿に戻ってしまい、それを防ぐ為に感情を封じた。決して、感情がないわけではない。そのようにしなければならない、理由があった」
レグナスの話によって思い出されるのは、セインが仕出かしたおぞましい事件。あの時、確かにダレスは竜の姿に変化し、破壊力が籠められたブレスで神殿の一部分を崩壊された。そのようなことになってはいけないと、自分達が忌み嫌っている存在が気遣ってくれていた。
同じ人間が気遣ってくれるというのならまだしも、半端者が心配りをしていた。ナーバルにとってこれほど屈辱的なものはなく、そもそもの原因を作り出したレグナスを罵倒しだす。流石にナーバルの罵倒は腹に据えかねたのか、後方で待機している二匹の竜が動き出す。
だが、攻撃を仕掛ける寸前でレグナスに制されてしまう。攻撃を仕掛けるのはいつでもできるのだが、今はそのタイミングではないと言っているのだろう。それに竜は見た目と違い殺戮を好む生き物ではないので、相手が馬鹿でも阿呆でもある程度は様子を見てから判断を下す。


