「だから、今は――」
自分達ができることをやらないといけない。サニアは意見に出た「混乱しないように導く」を実行しようと、娘達と共に聖都の中心部に向かう。予想以上に混乱は広がっており、多くの者は彼女達の意見を聞き入ろうとせず、それどころか自分勝手な意見を言い罵倒する。
何も知らない意見に彼女達は腹を立てそうになるが、彼等はパニックになっているので正しく思考が働いていない。そのように自分に言い聞かせ、懸命に落ち着くように説得していく。全てはダレス達の足枷になってはいけないという思いの中で、彼女達は動き続けた。
聖都同様に、神殿も複数の竜の登場に驚きを隠せないでいた。多くの神官が神殿内を行き来し、どうすればいいか話し合うが結論が出ない。その中で唯一冷静だったのがナーバルで、彼は空中を見上げつつ舌打ちする。また、腸が煮えくり返った思いをしているのか、毒付く。
竜達が、神殿の中心部に着地する。それと同時に人間の姿に戻ったのはダレスとレグナスで、守護に当たる二人は竜の姿のままで周囲を監視している。フィーナは久し振りの神殿に恐怖心が湧き出したのだろう、ダレスの身体に抱き付き密着すると離れようとはしない。
彼等の目の前に姿を現したのは、数名の神官を従えたナーバル。ダレスとフィーナの姿に気付くとナーバルの眉が微かに動くが、それでも冷静な一面を保ち続ける。ナーバルは竜達の存在を無視するかのようにフィーナの前に進み出ると恭しく頭を垂れ、感情と裏腹の言葉を放つ。
「さあ、神殿の中に……」
「……嫌っ!」
「何故でしょうか?」
「私は、もう……」
「何を仰るのですか。貴女様は、我々が敬愛している巫女です。その血で、多くの者達を……」
嘘八百とも取れる言い分に、無言を突き通していたレグナスが大声で笑い出す。まさか神官がここまで嘘を言えるとは思ってもいなかったのだろう「実に愉快」と言い、ナーバルの神経を逆撫でさせる。
レグナスの態度にナーバルは何か言い返そうとしたが、後方で従えている竜二匹の迫力にたじろいだのか、上手く言葉が続かない。へっぴり腰に近い態度にレグナスはフッと笑うと、自分の正体を神官達に言い放つ。刹那、神殿全体に動揺が走り誰もが過去の歴史を思い出す。


