新緑の癒し手


「俺は?」

「側にいればいい。私が、彼等と話を行う。まあ、相手が素直に対談に応じればいいのだが……」

「わかった」

 竜族を統率する族長の使命というべきか、今回はレグナスが直接神官と対談する。いや、対談というほど生易しいものではなく、もっと別の血を見るような展開に発展するに違いない。だからこそ護衛に付く二人に「威嚇していい」と言い、場合によってはそれ以上を命令する。

「お前は、その娘を守れ。神官は何も知らないのだから、真っ先に連れ戻そうとするだろう」

「威嚇は?」

「構わない」

「俺も、手加減なしで……」

「いいだろう」

 やる気十分とも取れる息子の言動にフッと口許を緩めると、それは一瞬の出来事。瞬時に冷たい表情に変化すると、出発すること告げる。その力強い言葉と同時に、それぞれが竜の姿に変化していく。ダレスはフィーナに向かい軽く頭を垂れると、彼等と同じように竜の姿に戻る。

 空を飛んで神殿に向かうということでフィーナはカボチャパンツを穿き、尚且つ防寒ということで分厚い服を纏っている。また、風によって乱れてはいけないと、髪を後方でひとつに纏めていた。フィーナは身を屈めてくれているダレスの背に乗ると、落ちないようにしがみ付く。

 空中を舞う竜の群れを、村の者達が仕事の手を止め見上げている。彼等の顔に見え隠れしているのは、不安と動揺。また、これからの世界の行く末を心配している。すると一人の小さな女の子が、フィーナが一緒に行ってしまったことに気付いたらしく、徐に口を開く。

「お姉ちゃん、行っちゃうの? お姉ちゃんのお菓子美味しいのに、食べられなくなっちゃうの?」

 女の子の無垢な質問に村の者達は、優しく声を掛けていく。あれは一時的な帰宅であって、またこの村に戻って来る。村に移住するには、以前住んでいた場所とさようならをしないといけない。だから何も心配することはなく、大人しく待っていれば大丈夫と安心させる。

 大人達の説明に一応納得したのか、女の子は頷くとそのまま何処かに遊びに行ってしまう。女の子の無邪気な姿に村人は微笑を浮かべるが、内心は複雑そのものといっていい。あれは半分本当で半分嘘であり、幼い子にこれから行われる出来事を話していいものではない。