新緑の癒し手


「ご、御免なさい」

「い、いや」

「ほ、本当に……」

「フィーナは、悪くない」

「で、でも……」

 互いに口にした言葉は何とも微妙なもので、それ以上の言葉が続かなかった。この雰囲気から先に逃げ出したのはフィーナで、彼女は寝台から降りると駆け足で部屋から出て行ってしまう。一人残されたダレスは頬を人差し指で掻くと、盛大な溜息しか付くことができなかった。


◇◆◇◆◇◆


 運命の日。

 レグナスの命令で、恰幅のいい人物二名が集められた。それぞれが逞しく厳つい雰囲気を持つが、外見と裏腹に根は優しく子供に人気の人物とフィーナは知っている。彼等はフィーナに気付くと軽く頭を垂れ、顔に似合わず可愛らしい笑顔を見せ、殺伐とした雰囲気を和ませる。

 彼等の心遣いにフィーナもぎこちないながらも笑顔を作るが、途中で恥ずかしくなってしまったのか、ダレスの背中に隠れてしまう。レグナスはフィーナのオドオドとしている態度を一瞥すると、息子だけではなく自分達を守護する二名に向かって、これからについて話し出す。

「攻撃は……」

「有り得なくもない」

「その時は?」

「威嚇して構わない」

 聞き方によっては物騒な言い方だが、身を守ることを優先すると仕方がない。また、人間達は自分以外の種族を見下しているので、何を仕出かすかわからない。だから此方が何を仕出かしても相手に文句を言われる筋合いはなく、場合によっては本当に攻撃していいと言う。

 勿論、全力で――

「そう、言うのでしたら……」

「お言葉に従います」

 その言葉が竜の本質を刺激したのか、守護に付く二人の爬虫類の双眸が怪しく輝く。彼等も人間の所業を許せないと考えているのだろう、口許も緩みだす。その変化を間近で見ていたフィーナはダレスの外套を強く握り締めると、人間がとんでもない種族を敵に回したと改めて認識する。