新緑の癒し手


 しかしその前に、やらないといけないことがある。レグナスは笑い声を止めると、真剣な面持ちで息子の肩を叩く。父親の合図にダレスは自身の頬を叩き紅潮を治めると、力強く頷き返し、決意の言葉を表す。たとえその先にどのような未来が待っていようと、受け入れると――




「明後日?」

「フィーナは?」

「行きたい」

「そう言うと思って、言っておいた」

「有難う」

 神殿に行きたいと望むが、神官達に何を言われるかわからない。そのことが不安感に繋がるのだろう、フィーナはダレスに抱き付く。肌から伝わる心地いい彼の体温に安堵感を覚えるが、身体の震えは止まらない。フィーナは抱き付く腕に力を込めると、胸に顔を埋めた。

「怖い?」

「……ちょっと」

「そうだね。神殿は……」

「あの場所は、ダレスも……」

「悪い思い出の方が多い。だけど、いい思い出もある。それは、フィーナがわかっているはず」

 それについてフィーナは「勿論」と言い、表情が綻んでいく。フィーナが笑顔を取り戻してくれたことにダレスの表情も綻ぶと、一度きつく身体を抱き締め解放する。個人的にいつまでも仲良くやっていたいのだが、いつ村人に目撃されるかわからないので油断できない。

「何か飲む?」

「ハーブティーで」

「菓子は?」

「あったかしら?」

「作る」

「いいの!?」

「簡単な物になるけどね」

 そう言い準備に向かうが、途中で足が止まってしまう。何を思ったのか、フィーナのもとへ戻ると「身体が悪いのだから、ゆっくりと休むように」と、念を押す。過保護に似たダレスの行動に、フィーナはクスっと笑うと「この場から離れないから、心配しなくていい」と、返す。