現在の状況からして、それが正しい選択といっていい。二人にとっての安住の地は竜の村で、有翼人や獣人が好意的に接してくれているとはいえ、それに甘えるわけにはいかない。また先程の話からしてレグナスも、二人が違う土地へ行かず自分の側で暮らして欲しいと考えている。
「ところで、父さん」
「何だ」
先程まで血が失われた後の世界の在り様等、真剣な表情で話し合いをしていたのだが、急に話が別の方向へ飛んでしまう。どうやら父親が発した「幸せになって欲しい」という言葉で今朝のやり取りを思い出してしまったのだろう、ダレスは動揺し声音が裏返っている。
また、言葉の端々が微かに震えたどたどしい言い方になってしまうが、ダレスは今朝のやり取りは村の者に内緒にして欲しいと頼む。何とも珍しく初々しい態度に、このようなこともできるようになったのかと、レグナスは言葉に示さなかったが嬉しさが込み上げてくる。
「恥ずかしい……か」
「……結構」
「お前の気持ち、わからなくもない」
「だから……」
このことを村の者に知られたら、何と言われるだろうか。行為自体を否定されることはないが、多くの者に面白おかしく茶化されることは間違いない。それ以上に彼等に最高とも取れる噂話を提供してしまい、下手すれば尾鰭まで付いてしまい完全に別の話になってしまう。
それを避けたいからこのように父親に頼み、昨晩の出来事が周囲に漏れないようにする。照れを隠しながら必死に頼み込む息子の姿に、レグナスは「仕方ない」と思いつつ、受け入れる。このことについて冷たく引き離すわけにもいかず、ましてや二人の生活の支障になってもいけない。
特に噂好きの耳に入ったら毎日のように突撃され、二人っきりの時間が失われてしまう。大事にしないといけないのは二人のプライベートで、いくら世話をしているとはいえ土足で踏み込んでいいものではない。それを理解しているからこそ、レグナスは首を縦に振った。
「そのような心配をするのなら、今朝も言ったが程々にしておけ。彼女を潰したら、元も子もない」
今の言葉が止めとなったのか、ダレスの顔が瞬時に紅潮していく。何ともわかり易い変化にレグナスは声を上げ笑い出すと、やっと幸福が訪れたことを知る。また、フィーナという利口で優しい子が息子と結ばれたことが嬉しく、できるものなら伴侶になって欲しいと願う。


