新緑の癒し手


「しかし、彼等は……」

「信じるどころか、あいつ等は嘘を付いていると言われるだろう。だが、言わないわけにはいかない」

「戻るよ」

「いや、共に行く」

「だけど、父さんは……」

 息子の何を言いたいことがわかったのだろう、頭を振る。だが、あの場所はレグナスにとって最悪とも取れる記憶しか残されておらず、行けば必ず傷付くだろう。それでも愚かな振る舞いをし続けている人間達に真実を突き付けないといけないので、行くことを決意する。

 レグナスにとっての決着のつけ方なのか、ダレスは父親の考えに何も言えなくなってしまう。レグナスは表情が曇る息子の肩を優しく叩くと、自分はこのようなことしかできないと言う。それは竜族を率いる族長だからというわけではなく、一人息子を持つ父親として動く。

 神殿で息子が苦労していることは知っていたが、手を差し伸べることができなかった。だから共に行き、自分の口から女神が人間を見捨てたということを伝えようとする。これくらいのことしかできないことを詫びるが、ダレスにしてみれば父親が共に行ってくれることは心強い。

「フィーナは?」

「無理ならいい」

「置いていくと言ったら、一緒に行くと言うかもしれない。やっぱり、最後は自分の目で……」

「……そうだな」

「大丈夫。何かがあったら、俺が……」

「そうならないように、力に自信がある者を連れて行く。此方の責任にされ、攻撃されると困る」

 人間の悪い部分を知っているからこそ、事前に身を守る準備をしておく。しかし全員が全員信頼できないわけではなく、人間の中にも信頼できる人物がいると父親にフィル王子の話をする。

「期待できるのか?」

「人間の中で、数少ない常識人だよ。一国の王子だから、あの人が説明すれば……多分……」

 信頼はしているが、何処か歯切れが悪い言い方しかできない。ダレスはフィル王子に血の力が失われた世界を引っ張っていって欲しいと期待しているが、果たして一人で混乱を収拾できるのか。正しい言葉は耳に届かず、混乱は暴動と化し自分自身の首を締め付けるかもしれない。