ダレスの心の何処かに他者を排除する性格があるのだろう、決して他者を頼らない。これもまた周囲から受けた言葉が関係しているのだが、フィーナはダレスの幼い頃は知らない。知らないからこそ、何でも自分でこなすダレスを「凄い人」と認識し、尊敬の眼差しを向ける。
しかしフィーナの尊敬の眼差しを向けても、ダレスは無表情で紅茶を口に含む。その時、ダレスの身体が反応を示した。彼は紅茶を飲むのを止めると、一言「呼んでいます」と、発する。
「誰?」
「神官です」
彼がそのように発した後、ダレスの私室の扉が叩かれた。そのタイミングの良さにフィーナは叩かれる扉を一瞥した後、どうすればいいか答えを求めるかのようにダレスの顔に視線を合わす。
「誰でしょうか」
訪れた人物が神官というのはわかっていたが、敢えて相手がどのような人物なのか尋ねる。ダレスの言葉に相手――神官は知っていながら自分の正体を尋ねてきたことに、何処か不満そうな声音を発するが冷静さを装い、巫女であるフィーナを呼びに来たということを話す。
神官の説明にダレスは椅子から腰を上げると扉の側に行き、相手を部屋の中に招き入れた。入室と同時に神官はフィーナの前に立つと、頭を垂らし彼女を呼びに訪れた理由を語る。
採血の準備を――神官の言葉に、フィーナの表情が変化する。巫女として神殿で暮すようになってから何度か採血を行っているが、採決の時に伴う激痛は慣れることはない。また「採血」という単語を聞く度に激痛を思い出してしまい身体が小刻みに震えだすが、拒否は許されない。
「……ダレス」
「何でしょうか」
「一緒に……」
「……はい」
採血の時に側にいるのは神官達だが、ダレスが側にいてくれるのなら頑張れるという感じがした。だからといって神官達を信用していないわけではないが、彼女はダレスの方を選ぶ。そのダレスが一緒に一緒に来てくれるということに、フィーナはホッとした表情を作る。
両者のやり取りを間近で聞いていた神官は、フィーナがダレスを信頼していることに違和感を覚えるのか、眉を顰める。相手がセインであったら感情のままに好き勝手に言っていただろうが、この神官はダレスを罵ることはしない。しかし、後で両者のやり取りを報告しなければいけないと思う。


