新緑の癒し手


「これは、ダレスが淹れた……の?」

「そうです」

「美味しい」

「母に習いました」

 ルキアは本を好んだ他に、紅茶を好んで飲んでいた。自分で茶葉のブレンドを行うまでではなかったが、独自の淹れ方を研究し美味しい紅茶を堪能していたという。母親とお茶の時間を楽しむことが多かったダレスは淹れ方を学び、後に自分なりの方法を模索していった。

 その結果、美味しい紅茶を淹れられるまで成長したが、母親が死んだ後紅茶を淹れる相手はいなくなってしまった。それにダレスを毛嫌いしている神官達とお茶の時間を楽しむわけにもいかないので、結局一人で紅茶を淹れ一人で楽しむ日々を送っていた。フィーナが現れるまで――

「また、いいかしら」

「お茶ですか?」

「こんなに美味しい紅茶……また、飲みたくて。その時は、私がお菓子を作って用意します」

「作れるのですか」

「豪華なお菓子は無理だけども……」

「いえ、楽しみにしています」

 それは感情が篭っていない淡々とした声音であっても、彼から「楽しみにしている」と言われたことが嬉しかったのか、フィーナの表情が綻ぶ。しかし、互いの間に長く会話が続くことはない。そもそもダレスは饒舌な方ではないので、何か話題がないと盛り上がらない。

 沈黙の中で、互いに紅茶を飲み味を楽しむ。ふと、沈黙を破りダレスが口を開いた。それはフィーナへの質問であり、どのような料理が作れ得意としているのかというものであった。

「だからといって、手の込んだ料理以外は……殆んどの料理は、短時間で作れたり調理法が簡単だったり……」

「ですから、菓子を――」

「ダレスは?」

「料理本に載っている料理でしたら、作ることはできます。といって、アレンジはできません」

 これもまた、一人での生活が長かったので生きる術として身に付けたスキルのひとつ。学習と努力を嫌う性格ではないので、ダレスは本を読み必要な知識を吸収していった。紅茶の淹れ方同様、基本となる料理を学習した後、自分の好みに合うように料理を施し腕前を高めてく。