新緑の癒し手


 確信があったとしても、強い躊躇いを持つ。どちらがいいか選択できない優柔不断の自分に、思わず毒付く。流石にこのようなことは父親に相談はできず、またヘルバが側にいれば一番いいのだが、今から有翼人の村に行くわけにはいかないので、自分自身で結論を出さないといけない。

 再びダレスは毒付くと階段を下り一階へ向かうが、どのように寝ようか迷う。フィーナに一階で寝ると言ったが、寝具をすぐに用意できるわけではない。身体を横にしたいのなら床に寝ればいいが、それではあちこちが痛くなってしまう。それなら椅子に腰掛け、テーブルにうつ伏せがいい。

 ダレスは纏っていた外套を脱ぎテーブルの上に置くと、椅子に腰掛け眠りに付く。いつもと違う態勢なのでなかなか眠気がやって来ないと思われたが、竜の姿で長い距離を飛んだことが身体に多大なる影響を及ぼしているのだろう、すぐに眠気が訪れ深い眠りの底に落ちた。


◇◆◇◆◇◆


 翌日、ダレスは何処か余所余所しい態度を取り続けていた。ダレスの態度にフィーナは「何かあったの?」と尋ねても、明確な言葉を返すことはしない。食事中も無言を突き通し、二人の間に気まずい空気が漂う。そして食事後、父親の仕事を手伝いに行くと言い残し姿を消す。

 いつものフィーナであったら仕事中笑顔が絶えないのだが、今日は顔色が優れない。織物仲間はすぐにダレスと何かがあったのか悟ったのだろう、口々に喧嘩したのか尋ねる。それについてフィーナは頭を振ると、ちょっと体調を崩しているのだと仲間達に嘘をついた。

「大丈夫?」

「今日は、休めば」

「人間って、身体が弱いのでしょ」

「後で、何か持って行こうかしら」

「一日くらい、平気よ」

 フィーナを取り囲むように発せられるのは優しい言葉に、心苦しくなってしまう。ダレスとの仲が悪いことを悟られたくないということで、ついつい付いてしまった嘘。それが、これほど大きくなってしまうとは――また、仲間達の温かい親切心に心が痛くなってしまう。

 しかし途中で「これは嘘でした」と言うわけにはいかないので、自分が病気だと嘘をつき続け、仲間達の心遣いを受け入れ今日一日家で休むことにする。村の中を歩いている途中で、レグナスと何やら話し込んでいるダレスの姿を目撃するが、声を掛けることはできなかった。