新緑の癒し手


 自分はフィーナの教育係兼守護者で、立場では下。所謂、従者のような存在なので、フィーナに作業をしてもらう理由はないと、ダレスは自ら進んでお茶の用意をしに行ってしまう。

 彼に言葉を掛けるタイミングを失ったフィーナは、彼の部屋で帰って来るのを待つしかできない。といって立ち尽くしているのは暇なので、本棚に並べられている本を眺めて待つことにした。

 ダレスに断りなく、勝手に本に触れてはいけない――という感覚を持っていたのか、フィーナは一歩離れるかたちで並べられている本を眺め、背表紙に書かれている文字を黙読していく。

 十数分後――

 用意を終えたダレスが戻って来た。

「これで宜しいでしょうか」

 テーブルの上に置かれるのはティーポットと二組のカップと、素朴な焼き菓子。フィーナとお茶をするので豪華な菓子を用意すべきだったが、これしか用意できなかったとダレスは謝る。

 だが、村での生活が長かったフィーナにしてみれば、豪華な菓子よりこのような素朴な菓子の方を好む。彼女の言葉にダレスは無言で頷くと、フィーナに椅子に腰掛けるように進める。そして自分はカップの中に紅茶を注ぎ入れると、彼女の前に差し出し自分も椅子に腰掛けた。

「いい香り」

「それは良かったです」

「飲んでいいかしら」

「どうぞ」

 フィーナはカップを手に取ると、一口含んでみる。苦味の中に存在するほのかな甘味が美味しく、滅多に紅茶を飲まないフィーナも好む味だった。顔を綻ばせ紅茶を飲むフィーナの姿を暫く眺めていたダレスだったが、自分もカップを手に取ると紅茶を口に含む。だが、紅茶の味が気に入らなかったのか一口含んだ後、カップを受け皿の上に下ろしてしまう。

「ダレス?」

「檸檬かミルクが必要でした」

「私は平気」

「入れると美味しいです」

 彼女に美味しい紅茶を飲んで欲しいのか、ダレスは檸檬かミルクを持って来るという。しかしフィーナは彼と一緒にお茶の時間を楽しみたいので、檸檬やミルクを持って来るのを断る。彼女にそのように言われたらダレスは動くわけにもいかず、再び紅茶を口に含んだ。