フィーナに出会う前、ヘルバがいたからこそ辛い神殿の生活に耐えることができた。感謝――いや、そのような言葉で表せられるものではなく、ヘルバは一生の友人といってもいい。フィーナにそのように話すとクスクスと笑い出し、素敵な友人がいて羨ましいと言う。
昔「友」と呼べる人物は存在したが、彼等のような関係までには至らなかった。だから二人の素晴らしい関係は羨ましく、そのように信頼できる友人ができればいいと本音を漏らす。彼女の言葉にダレスは頭を振ると、フィーナはヘルバとどのような関係なのかと尋ねた。
彼の指摘にフィーナは大事なことを思い出したのだろう、口許が緩みだす。ダレスが言うように、フィーナはヘルバと友人同士。いい話し相手で、神殿の外へ出る時は手を貸してくれた。故郷にいる友とは大きく違い、ヘルバは有翼人だが彼女にとっての真の友人と呼べる。
「あいつは、裏切らない」
「うん」
「……戻ろう」
「今日のご飯は?」
「軽めがいい」
「わかったわ」
ダレスの言葉がいい作用を齎したのか、フィーナの表情は明るい。しかし表情とは違い彼女が何処か無理していることを見抜き、それがヘルバの言葉が関係しているのではないかと考える。だが、ダレスはそれについて詳しく追及することはせず、共に肩を並べ歩き出した。
その夜、ダレスは一人で温泉に浸かり思考を巡らせていた。彼が考えるのは、これからの出来事。巫女の証である緑柱石(エメラルド)の髪色は、確実に以前の色彩を取り戻している。それからわかるのは、巫女の力が弱まってきているということ。また、女神が見捨てるということか。
フィーナと共に他の村へ行く時、竜の姿に戻った。以前と違いスムーズに竜の姿に戻れ、また身体に負担が掛からなかった。それらを総合すると、やはり血の力が弱まっていると考えるのは正しい。まだ完全に髪の色が戻っているわけではないが、あと数日で――と、考える。
これについてダレスはフィーナに話していないが、目に見えての変化が出る前に話しておかないといけない。巫女の責務から解放されるとわかった時、彼女がどのような反応をするかわからないが、これで日々の採血に涙を流さずに済み、神官の軋轢に耐えなくてもいい。


