「わ、私は……」
「勿論、今すぐには無理と思っている。だけど、これだけはわかって欲しい。あいつは……」
しかしヘルバは途中で言葉をはぐらかし、最後まで紡がれることはなかった。流石にフィーナ相手に、ダレスがどのように苦しみどのように耐えているのか、話すわけにはいかない。というより話すことは躊躇われ、純粋無垢に等しい女の子に言っていい内容ではない。
ヘルバが言葉を躊躇っていることにフィーナは首を傾げ、何を言いたかったのか聞き返す。だが、ヘルバは内容が内容なので言い訳を繰り返し、別の話に切り替える。急の話の変更にフィーナは再び首を傾げるが、どうして言ってくれないのか聞き出すことはできなかった。
ただ、ヘルバはフィーナに対し、ダレスの気持ちに気付いてやって欲しいと願う。好いている者同士、いつか寄り添い合い共に進んで欲しいもの。感情を封じながら一人で暮らしていたダレスを長く見続けてきたヘルバにとって、フィーナとの出会いは大きいものだった。
二人のやり取りは短いものであったが、フィーナとの話を終えたヘルバはダレスのもとへ向かう。レグナスに族長の手紙を手渡し、尚且つフィーナとの会話を行ったことにより用事が全て終了したのだろう、ダレスに一言「帰る」と言い残し、両翼を広げ天高く舞い上がる。
大空を舞い帰って行くヘルバの姿に視線を合わせつつ、フィーナは小走りでダレスのもとへ戻ると、無意識に彼の顔を凝視してしまう。その反応にダレスも同じように彼女の顔に視線を合わすと「何?」と尋ね、何か聞きたいことや尋ねたいことがあるのなら構わないと言う。
「い、いえ」
「それなら、ヘルバが何か言った?」
「優しいって」
「優しい!?」
「私も、ダレスは優しいと……」
「フィーナに言われるのは嬉しいけど、あいつに言われるのは……なんと言うか、こそばゆ
い」
「でも、嘘じゃ……」
「わかっている」
ヘルバの性格上、このようなことで嘘を言う人物ではない。だが、このように「優しい」と言われると照れくさく、何を言っているのかと言い返したい気分になってくる。それでもそのように自分を評価してくれることは有難く、ダレスもヘルバを優しい友人と思っていた。


