新緑の癒し手


 有翼人と獣人の村に行ったことがいい気分転換になったのだろう、フィーナは最高の笑顔を作る。過去を忘れた方がいいというのは無理だが、このように素直に笑顔を作れるようになったのは精神面が元気になった証拠。そう確信したダレスは、優しさが籠められた視線をフィーナに向けた。


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 竜の村に戻って気付いたのは、有翼人の存在。その者の正体はヘルバで、何でも族長の手紙をレグナスに届けたという。ダレスの存在にヘルバは彼を呼ぶと、ポケットの中からひとつの石を取出し手渡す。その石というのは、態々湖の底から探し当てた大事な物であった。

「落としただろう?」

「お前が持っていたのか」

「村に来た時に渡せばよかったが、スッカリ忘れていた。手紙を持ってきたついでに会えて、よかった」

「助かる」

「もう、無くすな」

 勿論、ヘルバに言われるまでもない。ダレスは受け取った石を大事に外套のポケットに仕舞うと、事前の連絡もなく有翼人の村に訪ねてすまなかったと謝る。それに対しヘルバは特に問題はないと言い、また族長もフィーナに同情心を持っているからこそ許可をしたと話す。

 ただ、特別なのはフィーナだけであって、人間全体を同等の目で見られるわけではない。人間――特に傲慢な態度を取り続けている神官の面々が心を入れ替えれば、と願うがそれが現実になることはあり得ない。だからこそ、種族間の蟠りが残り続けているのが現状であった。

「彼女をいいか?」

「何故?」

「少し……話をしたい」

 ヘルバを信用していないわけではないが、彼の真剣な表情にダレスは躊躇いを持つ。しかし友人の言葉を信じ、頷き返す。ダレスの了承にヘルバはフィーナを連れ建物の影へ向かうと、本音を話していく。それは、フィーナがダレスに頼りすぎているのではないかというものだ。

 与えられることが当たり前と思い、自分が何かを与えることを忘れてはいけない。ダレスは優しいからこそ、フィーナに無条件で与え続けているが、いくら我慢強いとはいえいつか限界を迎えてしまうもの。だからそのあたりをわかってほしいと、ヘルバは注意していく。