新緑の癒し手


 フィーナはダレスと共に、村の中を見学していく。竜の村や有翼人の村と違い、深い谷の間に獣人の村は作られている。二本の脚で歩く人間にとっては暮し難い場所だが、獣の姿をしている彼等にとっては特に不便が感じられないのだろう。壁に張り付くように、彼等は暮らしている。

 ダレスは歩きながら村の特徴的な部分を話していき、フィーナは彼の説明を好奇心たっぷりの視線を周囲に走らせながら聞き入り、時折質問を投げ掛ける。思った以上に広い村だったので途中で二人は石に腰掛け休憩していると、一人の村人から食べ物が差し出された。

 村の者が渡してきたのは白いふわふわとした物体で、蒸して作った食べ物なのか熱々だった。熱さに苦戦しつつフィーナは白い物体を二つに割ると、中から野菜を細かく切った具が顔を覗かせる。多くの調味料を使って味付けしているのか、食欲をそそるいい香が周囲に漂う。

「食べていい?」

「ああ」

 見たことのない食べ物だったので、恐る恐る口に運ぶ。すると口の中に甘味が広がり、フィーナの表情が緩んでいく。本当はもっと上品に食べるべきだったが、ついつい急いで食べてしまう。彼女にとってこれはお気に入りの食べ物となったのだろう、瞬く間のうちに胃袋の中に納まる。

「美味しい?」

「うん」

「作り方、教えて貰えば?」

「くれるかしら?」

「頼めば、大丈夫じゃないか? それにそんなに美味しそうに食べるのなら、覚えておいても損はないよ」

 フィーナは料理を嫌いではないので、作り方を教えて貰えれば後で自分の好みにアレンジしていってもいい。また美味しく作れるようになればダレスが喜んでくれるのではないかと、新しいレシピの習得に興味を持つ。それに後々、世話になっている村の者達に配ってもいい。

 ダレスに促され、フィーナは貰った食べ物の作り方を教えて貰うことにした。説明を聞いただけでは忘れてしまうので髪に材料と簡単な作り方を書いてもらい、それを貰うことにする。幸い、見た目と違って作り方は簡単で、これなら悪戦苦闘せずに作ることが可能だ。

 村の者にレシピを貰ったことに、フィーナは余程嬉しかったのか微笑んでいる。彼女の喜びにダレスは別の種族の村に連れて来たのは正解だったと確信し、これが癒しに繋がればいいと考える。また、素直に喜びを表現できるのは、心の傷が回復している証拠でもあった。