新緑の癒し手


 力の弱まりについては、今のところフィーナに黙っておくことにする。余計な心配をさせたくないというのが本音で、まずは精神面を完全に回復してもらわないといけない。その後に互いの身体に訪れた現象を伝え、これから先どのようにして生きていくか決めればいい。


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 翌日、ダレスは約束通りフィーナを有翼人の村に連れて行く。突然の人間の登場に多くの有翼人は驚愕するが、事前にヘルバの話を聞いていたからだろう、トラブルに発展することはない。それでも物珍しい視線を向け、巫女と呼ばれ崇められている女の子を観察しだす。

 ヘルバは、ダレスがフィーナを連れやって来たことに「どうして?」と尋ねてくるが、理由を話すと納得してくれた。竜の村同様に、彼等がフィーナに何かを仕出かす心配はない。ただ人間が珍しいのだろう、好奇心たっぷりの視線を向け彼女の一喜一憂に反応を示す。

 それが怖いのか、フィーナはダレスから離れない。可愛らしい彼女の態度にヘルバはクスクスっと笑うと、ダレスと二人で話したいことがあるので村の中を見て回るといいと言う。ヘルバの提案にフィーナは戸惑いを見せるが、ダレスがこの村は安全だと言い安心させる。

「悪い」

「ヘルバさんが、謝ることは……大丈夫です。有翼人の村は、ダレスから教えて貰ってから興味があって……」

「それなら、自分の目で見ないと。本で見知ったことと実際に見るとは、大きく違ったりする」

 ヘルバの言葉に元気いっぱいに頷くと、いそいそとフィーナは有翼人の村を見学しに行く。彼女の後姿にヘルバは「精神が安定している」と言い、ダレスの努力を湛えた。それに対しダレスは頭を振ると「自分は何もしていない」と謙遜し、ヘルバを笑わせるのであった。

 謙遜し続けるダレスにヘルバは、フィーナがあのように笑うことができるようになったのは、お前が彼女を温かく見守り側で支えているからではないかと褒める。しかしダレスはヘルバの意見を素直に受け取れる状況ではなく、日々の生活が辛いと珍しく愚痴をこぼす。

 滅多に聞くことのないダレスの愚痴に、ヘルバは理由を聞く。彼になら悲惨すぎる状況を話してもいいだろうと、項垂れながらフィーナとの生活に付いて語っていく。ダレスの言葉のひとつひとつにヘルバは顔を変化させながら聞き入り、途中で同じように項垂れてしまう。