髪の色を見てハッキリしたのが、血の力が弱まっているということなのか。影響が出ているのは自分だけなのか、それでもフィーナも同じように影響が出ているのか。真相を確かめようとダレスは急いで身支度を整えると、慌てて脱衣所の外へ飛び出しフィーナの姿を捜した。
「フィーナ」
「ダ、ダレス」
「か、髪は……」
「髪?」
「い、いや……何でも……」
フィーナを発見し彼女の髪の色を確かめた途端、ダレスは途中で言葉を止めてしまう。彼女の髪の色は、巫女の証である緑柱石(エメラルド)の色をしている。これを見た途端、自分の身体だけに変化が起こったとダレスは考えるが、巫女の血自体に影響が出ているのならいつか彼女の身体にも――
ただ、血の力が強すぎるので変化が出ていないのだろう。しかし重要なのはその点ではなく、女神が人間を見放そうとしているのではないかというもの。そうでなければ、髪の色が変化することなどない。この現実にダレスは、人間世界の崩壊に繋がるのではないかと悟る。
「……ダレス」
「あっ! その……さっきは……悪気があったわけじゃ……って、そういうことじゃないか」
「わ、私が気付かず……」
「もう、入っていいから」
「……うん」
羞恥心の影響で、フィーナはダレスと顔を合わすことができない。耳まで赤くしているということは相当動揺しているのだろう、申し訳ないことをしてしまったと心の中で謝る。いそいそと脱衣所に急ぐフィーナ。彼女が脇を通り過ぎた時、ダレスは違う色彩を目撃する。
見間違いでなければ、一瞬フィーナの髪が小麦色をしていた。反射的にダレスは振り返ると、彼女の髪に視線を移す。しかし今の色は、緑柱石(エメラルド)の色をしていた。やはり、見間違いだったのか――いや、そのようなことはない。確かに一瞬だけ、本来の髪の色に戻っていた。
やはり、血の力が――
母親が、望んでいた世界がやって来るというのか。巫女の血の力が失われ、どの種族も平行に生きる世界が。望んでいる世界が訪れることは本来であったら喜ばしいことであるが、いざ現実に訪れるとダレスは素直に喜ぶどころか複雑な心境に陥り、不安感の方が強まる。


