一拍置いた後、ダレスは言葉を発する。お勧めの本と言われてもダレスにしてみれば全ての本が面白いので、どのような内容が好きなのか聞かないとお勧めの本を選び出せないと伝える。
フィーナに好む内容は、一言で言えば「恋愛物」といっていい。しかし本棚に並べられている本の大半がファンタジーで、冒険物が多い。文章の中に多少恋愛要素が含んだ話も存在するが、それはスパイス程度のもの。だから、フィーナが好む本格的な恋愛物は存在しない。
彼の説明を聞いたフィーナは、ファンタジーで冒険物でもいいと言う。だからお勧めの本を選んで欲しいと頼まれると、ダレスは十代後半の男女が冒険に出掛けるという話の本を選ぶ。
「これはどうでしょうか」
彼が差し出した本は「剣と魔法物」を主体とした話。その中に恋愛要素も多少含まれているので、恋愛物を好むフィーナが読み易いのではないかとこの本を選ぶ。フィーナは彼が差し出す本を受け取るとペラペラと頁を捲り挿絵を探すが、この本には挿絵は描かれていなかった。
「挿絵は……」
「ありません」
挿絵を期待していたフィーナであったが、ダレスの言葉にちょっと残念な気持ちになってしまう。別に挿絵がなければ読めないということはないが、彼女が本を読む時素敵な挿絵に期待するという。それを聞いたダレスは並べられている本に視線を走らせると、挿絵がある本を探す。
「この本は、挿絵があります」
「覚えているの?」
「はい。フィーナ様がいらっしゃる前までは、かなり時間がありました。ですので、何度も本を読み……覚えました。まあ、母と同じで本が好きというのも関係あるのかもしれません」
「凄い」
「いえ、そのようなことは……」
心からの絶賛であったが、感情を表面に出さないダレスはいつもの無表情であった。どのような言葉を言っても表情を変えない彼に、フィーナの心がチクっと痛み出す。彼女の心情に気付いていないダレスは挿絵がある本を取り出すと、フィーナの目の前に差し出した。
差し出された挿絵付きの本を受け取ると、フィーナは小声で礼を言う。それに対しダレスは、一言「いえ」と返すと、お茶の用意をしてくると言葉を続けた。彼の言葉にフィーナは頭を振ると自分で用意をすると言うが、ダレスが彼女の言葉を受け入れることはなかった。


