新緑の癒し手


「何かありましたか?」

 ダレスは扉を閉めた後フィーナに視線を向けると「何故、自分のもとへ訪ねてきたの」と、尋ねる。しかし言い難い内容を持って彼女は訪れたのか、それとも恥ずかしい内容なのか――フィーナは何処かオドオドとした態度を取り、ダレスと視線を合わせようとはしない。

 だが、意を決し彼女が発した言葉というのは、ダレスと一緒にお茶の時間を過ごしたいというもの。何かトラブルが発生したのかと身構えていたが、彼女の頼みに安堵したのか快く了承する。

「本当に、宜しいのですか?」

「はい」

 フィーナからの返事を受け取ると、ダレスは先程読んでいた本を手に取ると本棚の定位置にその本を仕舞う。彼の一連の動作を無言で眺め視線で追っていたフィーナは、彼が片付けていた本がどのような物なのか尋ね、興味を示したのか好奇心たっぷりの眼差しダレスに向ける。

「母の遺品です」

「どのような本ですか?」

「これは、冒険物です。他にも多くの本を母は残してくれました。この本棚の中にあるのは、全てそうです」

「こんなに……」

 彼が本を仕舞った本棚に並べられている本の数は、簡単に数えて数十冊以上は存在する。これだけの冊数を残したということは、ダレスの母親は相当本が好きだったということを知る。

 フィーナは本棚の近くへ行くと、綺麗に並べられている本に視線を這わせ背表紙に書かれている文字を読んでいく。彼女もルキアと同じように読書が好きなのだろう、瞳が輝いていた。

 キラキラと瞳を輝かせ本を眺めているフィーナの姿にダレスは、目に付いた本のあらすじを語る。彼の説明に本に対して興味が増したのか、説明を遮るかたちで質問を投げ掛ける。

「何か、読まれますか?」

「いいのですか?」

「はい」

「どれがお勧め……かしら?」

 普段の癖で敬語を使いそうになってしまうが、慌てて砕けた言い方に変える。その変化にダレスはいつもの無表情を浮かべているが、言葉をすぐに発することはしない。しかし彼はフィーナの言い方に違和感を覚えたのではなく、言葉を発するタイミングが掴めなかったのだ。