新緑の癒し手


「菓子か……子供が喜ぶな」

「普通に美味しい」

「なら、尚更いい」

「父さんが協力してくれるのは、彼女が巫女だから? 彼女を……母さんと重ね合わせて……」

 それに対し、レグナスは明確な回答を言おうとはしない。ただ「見捨てられない」と言い、それ以上は何も言うことはしなかった。レグナスは、一族が人間を嫌っていると言った。嫌いなら人間であるフィーナに手を差し伸べることはしないが、レグナスは差し伸べた。

 やはり――

 そう確信するが、ダレスは口を開くことはしない。

「名は、何と言う」

「……フィーナ」

「いい名だ」

「寂しがることが多い」

「それなら、一緒にいた方がいい」

 父親の意見に、ダレスは軽く頷き返す。精神面の傷の他に、神殿で暮らしていた頃からフィーナは自分を頼った。唯一信頼できるからだろうが、話が合い――いや、愛情を抱いているからだろう。それにダレス自身も彼女に深い愛情を抱き、だからこそ村に連れて来た。

 しかし、ひとつ屋根の下で生活するのは気恥ずかしい。躊躇いが強いが、彼女の気持ちを優先すれば一緒に暮らすのが無難。ダレスは珍しくしどろもどろになってしまうが、フィーナと一緒に生活することを選ぶ。息子の了承にレグナスは頷き返すと、今度は身体を心配する。

「しかし、本当に平気なのか?」

「床で寝る?」

「痛いぞ」

「一日くらいなら、平気だよ。明日から、空き家を用意してくれるというし……毛布は、貸して欲しい」

「勿論だ」

「この場所でいい?」

「それなら、一緒の部屋がいいだろう」

 言葉の意味が理解できなかったのか、ダレスは「父親の部屋で?」と、尋ねる。だが、レグナスはそのようなことで言ったわけではないので、表情が微かに歪む。レグナスはフィーナが休んでいる部屋の床で寝ればいいと言ったつもりだが、どうやら伝わっていなかったらしい。