新緑の癒し手


「……竜の村」

「そうだ」

「……神殿じゃない」

「ああ」

 互いに何度か交わされるのは、短い言葉のやり取り。ダレスの力強い口調でフィーナは気分が落ち着いたのか、掴んでいた服を離す。彼女の行動にダレスは一度強く彼女の身体を抱き締めた後解放すると、これまた子供をあやすように丁寧に髪を撫で、そっと軽く頭を叩く。

「血の影響……大丈夫?」

「今は、自分の心配をした方がいい。ただ、血の影響は感じられない。いつもはもっと続くが、今回は……これはこれで助かる。普段と同じように、感情を出さなければ影響はない」

「良かった」

「だから、今は自分のことを大事にする」

「……うん」

 フィーナの返事を聞いたダレスは踵を返し、部屋から立ち去る。フィーナは扉が閉まるのを確認した後、力が抜けたように寝台に横たわると、枕に顔を埋めながら身体を丸くする。しかし肉体と精神の両方が激しく疲弊しているのはわかるが、なかなか眠気が襲ってこない。

 だけど、眠らないと疲労を癒すことができない。顔を埋めていた枕を抱き締めると、硬く瞼を閉じ早く眠気がやって来るのを待つ。すると彼女の願いが天に届いたのか、徐々にだが眠気がやって来る。ああ、これで――フィーナは溜息を付くと、その眠りに身を委ねた。




「寝たか?」

「どうだろう」

「冷たい言い方だ」

「すぐに寝られるほど、彼女は強くないです。それに、傷付けられた相手を相当嫌っていました」

「襲われたと言っていたな」

「未遂でした」

 息子の説明に、レグナスは一言「そうか」と、言葉を返すしかできない。神殿側の巫女に対しての仕打ちが昔から変わらないことに憤りを覚え、ましてやこのような重大な事態に発展するとは――レグナスは、人間は落ちるところまで落ちたのではないかと、評価を下す。