「大丈夫よ」
「駄目だ」
風邪をひかれ寝込まれたら看病が大変というのも勿論だが、高熱で苦しんでいるフィーナを見るのも心苦しい。だから、このようにまだ髪から水が滴り落ちている状況をそのままにしておくことができず、ダレスは彼女の頭にタオルを被せ髪全体の水分を拭き取っていく。
「……ダレスって優しい」
「そうか?」
「うん。神殿ではまわりが気を使ってくれたけど、本当に優しいのかどうかわからなくて……」
「彼等は役割を果しているだけだ」
「その中で、ダレスは……」
「何?」
「うんん。何でもないわ。その……貴方の外套、いいかしら。今、それを羽織りたいと思って……」
「寒い?」
「そういうことじゃないの。ただ……」
常に側にいて欲しいと頼めないので、せめて貴方の外套だけは欲しい。それでダレスの存在を感じ、心の安らぎとしたい。そのように言いたいのだが、羞恥心が前面に出てしまうので流石に言うに言えない。だから遠回しで言い、雰囲気でダレスに察して欲しいと願う。
ヘルバ同様に、ダレスも勘がいい。それにオドオドとしているフィーナの態度と心情を総合すれば、自ずと彼女が何を思い何を求めているのか判断できる。ダレスは髪を拭いている手を止めると、そっと彼女の身体に外套を羽織らせ「これでいいのか」と、優しく尋ねる。
「……有難う」
「これくらいで喜ぶのなら、それでいい。さて、大分拭いたが……まあ、これくらいでいいか」
髪から水が滴り落ちていないことがわかると、ダレスは使用していたタオルを器用に四つ折にし、持っていて欲しいと彼女に手渡す。そして脱衣所に忘れ物がないかどうか確かめた後、ダレスは靴を履いていないフィーナを軽々と抱き上げると、父親が待つ家に急いだ。
到着の後、フィーナはレグナスに服を用意してくれたことに感謝の言葉と共に頭を垂れる。それに対しレグナスは頭を振り「当然のことをしたまで」と、言葉を返す。だがフィーナにしてみればよそ者の――ましてや人間である自分を助けてくれたことが、感謝の気持ちでいっぱいになる。


