新緑の癒し手


「ダレスは?」

「俺は、外で待っている」

「いいの?」

「一緒に入っていいのか?」

「この温泉って、男女が一緒に入るの?」

「一緒……だったはず」

「わ、私……」

「フィーナが嫌がっていることはしない。一人でゆっくりと入ればいいし、言ったように外で待っている」

 ひとつの温泉に男女が一緒に入浴するということに、躊躇いがないわけではない。しかしこの温泉はフィーナが恐怖心を抱いている人間が利用するのではなく、村の住人である竜が利用している。それに時間帯が遅いので誰も入ってこないと、ダレスは彼女を安心させる。

「そ、それなら……」

「時間は、気にしなくていい」

「……うん」

 フィーナの返事を聞くと、ダレスは温泉の側に建てられている小さい建物の前に彼女を降ろす。彼の話では、この建物が衣服を脱ぐ場所となっている。そして自分はこの建物の前で待っているので、入浴を終えたら声を掛けてくれればいいと彼女に話し、自分は立ち去る。

 彼の話しに従うように、フィーナは建物の中で借りている外套と下着を脱ぐと、入浴を試みる。立ち上る湯気によって一瞬視界が覆われるが、徐々に目が慣れてくると温泉の全貌がわかる。この場は、一日の疲れを落し団欒と憩いの場所となっているのだろう、全体的に綺麗に整えられていた。

 湧き出る白濁の温水は複数の石を楕円状によってせき止められ、尚且つ周囲から内部の状況が覗けないように木製の板が周囲を覆い洗い場も設置されている。目隠しがされていることに安堵感を覚えたフィーナは、恐る恐るという雰囲気で湯の中に身体を静かに沈めていく。

 全身を包む心地いい温かさが気持ちいいが、それ以前に身体を綺麗にできることが嬉しかった。フィーナは、セインに触れられた箇所を重点的に丁寧に洗っていく。何度も何度も必死な思いで洗い続け嫌な記憶と共に洗い流さんとするが、意識すればするほど思い出してしまう。

 幾重にも、涙が零れ落ちる。男女の行為は通常、心が通じ合っている者同士が行なうものとされ、村で暮らしていた時、それが正しいものだと耳にしていた。現に同年代の同性も好いている相手と床を共にし、幸せになっている。だが、フィーナは幸せどこか恐怖を味わった。