新緑の癒し手


「何故、お前が……」

「彼女を……匿って欲しく……」

「匿う?」

 息子の必死の懇願にレグナスは、抱かれているフィーナに視線を移す。刹那、彼女の緑柱石(エメラルド)をする髪に驚愕し、目を見開く。そして瞬時に、神殿で何か重大なトラブルが発生したものと理解する。暫しの沈黙の後長い溜息を付くと、レグナスは二人を自宅に招き入れた。

「大まかな理由を話せ」

 扉を閉めると同時に、レグナスは息子に神殿での出来事の説明を求める。説明について一瞬ダレスは躊躇いを見せるが、フィーナが首を縦に振り同意の意思を示していることがわかると、主要な点を掻い摘んで話していく。その途中、記憶が蘇ったのかフィーナの身体が震えだす。

「……そうか」

「だから……」

「なら、温泉に連れて行くといい」

「温泉?」

「身を清めたいだろう」

 父親の気遣いにダレスは無言で頷くと、フィーナにこの村には温泉が湧き出していることを説明する。温泉に浸かり冷えた身体を温め、尚且つ身体を洗えば多少は気が紛れるのではないか。彼の話にフィーナは力強く頷くと、ダレスの服を掴みながら温泉に行きたいと頼む。

「その娘に合う服は、私が用意しよう。その服を着続けていては、気分が落ち着かないだろう」

「す、すみません」

「構わない。お前が村の者に直接頼んだところで、説明前では面倒なことに発展してしまう」

「確かに……」

「今回は、状況が状況だ。何とか理由をつけて、服を借りる。それに私の方が、話が早く済む」

「本当に……」

「だから、構わないと言っている。それより、その娘のことを第一に考えろ。頼れるのはお前しかいない」

 恭しい態度を取り敬語を使用するダレスに、レグナスは肩を竦める。互いに親子同士なので、そのような言動をしなくてもいい。それにそのようなことをする時間があるというのなら、彼女の気分転換を図るのを優先しないといけない。だから早く温泉に連れて行けと、息子を促す。