まだ荒い呼吸が治まっていないが、早く人間の愚かな行いを伝えないといけない。ヘルバは疲れている身体に気合を入れると両翼を広げ空中に舞い、有翼人の村へ急ぐ。それに続きダレスも両翼を広げると舞い上がり、フィーナの精神を癒す為に竜の村へと急ぐのだった。
漆黒の闇に溶け込む、二つの影。ダレスに巫女を連れて行かれたことにナーバルは悔しがり舌打ちをすると、連れ戻すのに竜の村へ行かなければいけないと言い放つが、彼の言葉に頷く者はいない。見せ付けられた圧倒的な力の差に意気消沈したのか、誰もが項垂れている。
不甲斐ない面々にナーバルは悪態を付くと、この忌々しい状況をどのように乗り切ればいいか思考を働かせる。しかし珍しくいい方法が思い付かないらしく、苛立ちだけが募るのだった。
◇◆◇◆◇◆
ダレスの故郷である竜の村が存在しているのは、高い山と深い谷に囲まれている、まさに未開の地という名前が相応しい場所だった。この場所に自由に行き来できるのは空中を自由に舞う翼を持つ生き物のみで、人間が竜の村に立ち入ったという記録は残されていない。
ダレスが舞い降りたのは、村外れの目立たない場所。本来であったら堂々と村の中心部に舞い降りていいのだが、大事に発展させたくないという理由で村外れを選択する。着地と同時に竜の姿から人間の姿に戻ろうとするが、まだ血の影響が続いているのだろう上手く戻れない。
それでも以前よりは上手く制御が可能で、身体の大部分は人間としての形を保っているので、特に問題はないと判断したダレスはフィーナを抱き直す。地面に着地したことにフィーナは胸に埋めていた顔を恐る恐る上げると、周囲に視線を走らせながら到着したのか尋ねた。
「村の中というより、外れに到着した。ところで、寒くない? 結構な速度で、飛んでいたから」
「ちょっと」
「御免」
「寒いといっても、ほんのちょっと。ダレスが側にいてくれて、それにくっ付いていると温かいわ」
ダレスに気を使って強気を演じるが、身体の方は外気温に敏感だった。フィーナは一度身震いすると、くしゃみをしてしまう。それにより言葉では「ちょっと」と言っているが、相当無理をしていることが判明し、風邪をひいたのではないかと余計な心配をさせてしまう。


