「竜の村に来るか」
「いいの?」
「勿論」
「行きたい。貴方と一緒に……」
「ああ、行こう」
フィーナの申し出に力強く頷き返すとダレスは彼女の側に行き、軽々と華奢な身体を抱き上げる。自分の側にいるのがセインではなくダレスだということに強い安心感を抱くのだろう、フィーナは抱き上げられると同時に彼の身体に抱き付き、逞しい胸に顔を埋めていた。
「行くぞ」
「うん」
ダレスの言葉に応えるように、抱き締めている両腕に力が込められる。身体から伝わる彼女の強い意志に、もうこの場所に未練などないということが痛いほど理解できた。それに長々と神殿にいれば彼女が負った傷を拡大させ、一生掛けても消えないものになってしまう。
ダレスがフィーナと立ち去ろうとした時、乱暴に扉が開かれ複数の神官が部屋になだれ込んで来る。彼等の視界に真っ先に飛び込んできたのはダレスの姿だったのだろう、不在だった人物がいることに驚きを隠せない。いや、それ以上に身体が大幅に変貌していることに息を呑む。
しかし彼等が、ダレスがこの場にいる理由を尋ねることはなかった。床の上で無様な姿で気絶しているセインに気付いたらしく、特にナーバルが顔を引き攣らせている。ナーバルは嘗て息子と呼んでいた人物の側に行くと、躊躇うことなく平手打ちを食らわせ目覚めさせる。
「ち、父上」
「貴様! 何故、神殿にいる」
「そ、それは……」
勘当を言い渡した後、さっさと荷物を纏め神殿から出て行くように言い渡した。それだというのにセインは神殿内に留まり、フィーナの寝室で気絶している。それも顔を血と胃液で汚し、無様に伸びていた。この状況から推測されるひとつの出来事に、ナーバルの雷が落下する。
「お、お許しを――」
「許さん!」
一体、どこまで一族の名前に泥を塗れば気が済むというのか――勘当した時点で二度と関わりを持たないで済むと確信していたが、馬鹿はナーバルが考える以上のことを仕出かし、恥の上塗りをする。再び逆鱗に触れるようなことを行なわないように、殺害した方がいいか――


