セインにしてみれば、フィーナの激しい抵抗は予想外のことであった。心の何処かではすんなりと受け入れてくれるのではないかと予想していたが、それが見事に裏切られてしまった。あまつさえ自分とダレスを見比べられ、彼の方が優秀だと面と向かって言われてしまう。
何故、あいつが――
悔しさのあまり奥歯を強くかみ締めると、セインはフィーナを近くにあった寝台に押し倒す。自分はあいつより優れており、全ての面において自分が勝っている。それを欲望というかたちで見せ付けたいのか、セインは押し倒され呆然としているフィーナの唇を奪った。
嫌悪感を抱いている相手からの突然の口付けに、フィーナの全身に鳥肌が立つ。それと同時に大ッ嫌いなセインにはじめての口付けを奪われてしまったことに、フィーナの目許から大粒の涙が零れ落ちる。
想像を絶するおぞましい感触に、フィーナは両手でセインの身体を押し逃れようとするが、いくら下半身しか鍛えていないと揶揄された人物であっても彼は列記とした男。フィーナの抵抗をものともせず簡単に両腕を封じると、角度を変えながら何度も彼女の唇を味わう。
その時、彼の手が衣服を掴んでいることに気付く。いくら知識と経験がないフィーナであっても、彼が何を仕出かそうとしているのか判断は付く。唇を塞がれているので大声を出すことができないので、懸命に呻き声を上げ止めて欲しいと訴えるも、彼が聞き入れてくれることはない。
それ以上に相手がセインということに絶望感に似た感情が心を支配し、フィーナの身体の震えは止まることはない。今のフィーナの顔は顔面蒼白で、ただこれが夢であって欲しいと願うしかできない。
「ど、どうして……」
「どうして? 夫になる人物に対し、野暮な質問をするね。所謂、婚前交渉というやつだよ。どうせいずれは一緒になるのだから、早くても遅くても関係ない。それに巫女は次代を担う巫女を産まないといけないし、産めば後が楽で仲良くする時間が増えて、巫女様にとっても楽だ」
「嫌っ! 貴方なんて……」
「強情だね。まあ、そういうところも嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど、少しは素直になった方がいい。それに、できるなら手荒に扱いたくないんだ。すると、後で回りが煩いし」
セインの本音にフィーナの心臓がドクっと音を鳴らし鼓動すると、冷たい何かが心の中にサーッと広がっていく。女の弱い部分に、気を配ることのできない人物に――その現実にフィーナは嗚咽を漏らすと、自身の身に降り掛かった最大級の不幸を呪うしかできないでいた。


