セインは経験とテクニックに関しては想像以上に豊富で、その道のベテランといって過言ではない。また性経験の他に恋愛の面の娼婦相手に相当数の経験値を積んでいるので、ナーバルは恋愛未経験のフィーナを簡単に落とせ、セインの意のままにできると考えていた。
そしてフィーナと規制事実を作れば周囲は何も言えないと考え、セインを夫候補とした。息子の素行の悪さに前々から頭を痛めていたが、まさかその欠点がいい面に働くかもしれないとは――
しかし、全てが思い通りにいくわけではない。ナーバルは何が何でもセインをフィーナの夫にしようとしていたが、彼が利用しようとしている息子の特徴は別の意味で問題を生み出す。
知られていないようで知られている、セインの素行。神官達からの賛同を得られようが、果たして民から賛同を得られるかどうか怪しい。何せ、セインの娼婦相手の行為は有名な話なのだから。
また、何百年前にどのような理由で誰が定めたのかは記録に残ってはいないが、巫女の結婚年齢は18歳と定められている。そして現在の巫女フィーナの年齢は17歳で、結婚できる年齢ではない。
そして、フィーナの周囲には守護者兼教育係のダレスという人物がいる。彼は普段「教育係」として振る舞っているが、彼が持つ剣の技術は高く神殿の中でダレスと勝負して勝てる者はいない。
それにダレスは巫女を守るという使命を第一に考えており、相手が神官であっても「不要」と判断した場合、彼は躊躇わず抜刀する。最悪、相手の命を奪うことも厭わないという感覚の持ち主。セインもその点が気に掛かるのか、ダレスをどのようにあしらえばいいか尋ねる。
「自分で考えろ」
「そ、そんな」
「たまには下半身だけではなく、上半身の方にも血を回せ。まったく……鬱陶しい小蝿のようだ」
冷たい言葉を発し息子を切り捨てるが、正直ナーバルも適切な回答が見付からなかったのだ。ダレスの件は権力でどうこうできないものでもないが、あのように見えて民の中に味方が存在する。下手に手出ししたら、一番味方につけなければいけない民に横を向かれてしまう。
半端者の癖に、忌々しい。
ダレスという存在に、ナーバルは苛立ちを覚える。そもそもダレスの母親がきちんとした相手と結婚し、巫女になれる女子を産んでいれば巫女の血が途切れることなく続いていた――と、愚痴を発してしまいそうだが、今更そのことを言っても問題の解決には繋がらない。


