「捜したぞ」
「何かあったのか?」
「あったというか……てか、お前こそ何をやっていたんだ。あれほど、大声で呼んでいたのに」
「探し物。これをフィーナに、贈ろうと思う。綺麗だろう? 指輪に加工しようと考えている。色々と探してみたが、湖の底で採れる石が一番綺麗だった。で、潜っていたから見付からなかったのだろう。まあ、叫んでいるのは聞こえたが、着替えている最中だったから……」
ポケットから取り出して見せたのは、掌に納まる白と青の色彩が混じっている半透明の石。ダレスの話ではフィーナに迷惑を掛けているので、せめてもの侘びということでこれを加工し彼女に贈りたいという。だからこの件については内緒にして欲しいと、口止めする。
「おい」
「別に、いいじゃないか。それに、結果として会えただろう? で、どうして俺を捜している」
「あいつが行動を起こす」
「あいつ?」
「あの阿呆だ」
「行動とは、何だ」
「彼女を……狙っている」
ヘルバの言葉に、ダレスの眉が動く。そして今の言葉だけで大体のことを理解できたのだろう、冷静に保ち続けていた感情が刺激される。血の呪縛の影響と感情の起伏により、ダレスの手首から甲にかけて緑柱石(エメラルド)の鱗が浮き出す。それを隠すように反対の手で覆うと、舌打ちする。
「あいつは、勘当された」
「等々、見放されたか」
「親だけではなく、一族から見放された。だから、自棄になっている。あいつは今夜、彼女を襲い……」
しかし言葉は、最後まで発せられることはなかった。此方に向けられているダレスの双眸が人間としての瞳ではなく竜本来の爬虫類の瞳に変化し、鋭い眼光で睨み付けられていたからだ。また彼の全身から発せられるオーラには明らかな殺気が混じり、ヘルバを竦ます。
たとえ親友であったとしても発言を誤れば、殺されてしまう。そう思える雰囲気にヘルバは息を呑み、自身の身体が小刻みに震えていることに気付く。そして感情の変化はダレスの身体に著しく影響を及ぼし、頭上に向けて叫ぶ声音は人間のものではなく竜の咆哮だった。


