新緑の癒し手


「いいだろう」

「宜しいのですか?」

「構わない」

 そのように言われても、セインは素直に喜びを表面に出すことができない。本当は喜ばしい内容なのだが、父親の性格を熟知しているので何か裏があるのではないかと、身構えてしまう。そして、とんでもない何かが待ち受けている――と、思考を悪い方向に働かせ、身体を震わす。

 案の定、自身の考えが正しいと知る。ナーバルが息子のセインを呼び出した理由というのは、癒しの巫女フィーナに関わること。巫女の役割は、癒しの血を病人や怪我人に分け与える他に、次世代の巫女を産むというもの。

 ナーバルが言いたいのは、役割の後者の部分。次世代の巫女を誕生させるには、誰かが巫女の夫にならないといけない。ナーバルはその相手を息子にしようと、考えていると話す。

「僕が?」

「不服か?」

「不服ではないけど……」

 突然「巫女の結婚相手」と言われても、衝撃の方が大きいので動揺を隠し切れない。しかしセインの方も満更でもなく、巫女の夫になった人物は絶大な権力を得られるというのを知っているので、口許が緩んでいく。

 何故、ナーバルが息子を選んだのか――

 理由のひとつは、ファーデン家の血筋。代々神官を輩出している名門一族ということで、最高の血筋に分類される。そして神官達は巫女の夫になる人物は「高名な者」と決めており、ファーデン家の血を引いているセインがフィーナの夫になるということを反対しないという。

 次に第二の理由というのは、セインがフィーナと結婚した場合、神官達が権力を全て握れるからだ。ナーバルを含め他の神官達は表面上は柔和な一面を見せているが、権力に固執し腹黒い者も多い。

 だから両者を結婚させて、セインを「巫女の夫」という立場を最大限に利用しようと考えていた。そして最後の第三の理由は、セインが持つ人並み外れた半端ない体質が関係している。

 要は、次世代の巫女の誕生を望むという訳だ。

 全ては、力を後世に残すという理由で――

 子を産む行為は代々の巫女が普通に行なってきたことだが、今回の場合それに「権力」が絡んでくる。そして第三の理由の「人並み外れた体質」という点が、いい方向――もとい、早めの妊娠を期待するというもの。何せ一日三人の娼婦を相手にできるのだから、期待しないわけがない。