新緑の癒し手


 自分もいつか、愛する人と共に――

 フィーナは自身が抱いている想いを言葉として表すことはしなかったが、フィル王子は彼女から感じられる雰囲気で、今何を考え思い詰めているか見抜く。同時に彼女がダレスに好意を抱いていることは間違いないと確信すると、そっとそのことについて尋ねることにした。

 勿論、彼女は即答を避けた。それはフィル王子が信頼に値しない人物というわけではなく、簡単に見抜かれてしまったことが恥ずかしかった。フィーナは頬を微かに赤く染めると、言葉の代わりに頷いて返す。しかしそれさえも恥ずかしかったのだろう、フィル王子と視線が合わせられない。

「……そうか」

「でも、神官が聞いたら……」

「彼等には、黙っておいた方がいいだろう。あの者達は、人間以外の種族を毛嫌いしている」

 一拍置いた後、フィル王子は言葉を続ける。現在の状況で、巫女が人間以外の種族と結ばれるのは難しい。神官の性格を考えれば、どのような手段を用いても妨害してくるだろう。ダレスの身の安全を図るというのなら、信頼が置ける人物以外には話してはいけないと忠告する。

「フィル様は……」

「何だ」

「フィル様は、反対なのでしょうか」

「本来、他種族との交流が盛んに行なわれている状況であったら、違う種族同士の婚姻は当たり間に行われているだろう。しかし現在は、人間が一方的に他の者達を締め出している。だから、今の状況を考えれば婚姻は難しい。しかし私自身、否定する権利は持ってはいない」

 フィル王子は、ダレスの両親に付いても言及する。もし彼等の間に巫女が誕生していたとしても、幸福な人生が送れていたのだろうか。半分竜の血を引いた巫女を、誰が望むというのか。その血に癒しの力が存在していても、汚らわしい血を半分引いていると邪険に扱う。

 巫女は、純粋な人間でなければいけない。他の種族の血が混じった巫女は、巫女であらず。女神が与えてくださった力を人間以外の血で汚してはならない。固執した考えを持つ神官はそのように言い放ち、どちらにせよダレスの両親に明るい未来が待っていたとは思えない。

 だからこそ、フィル王子は言う「血の存在こそが、人間の衰退に繋がる」と。真に平和な世界が訪れるには巫女の血など存在しない方がいいのだが、消滅の方法はわからない。また過去を思うからこそ、ダレスとフィーナが結ばれることにフィル王子に慎重になってしまう。