まさか有翼人が登場するとは、完全に予想外といっていい。ダレスの交友関係は狭いと考えていたが、やはり忌々しい血を引く者。彼と交友関係を築く者も、同じように忌々しい者。それに純白の翼を持たない時点で、ナーバルを含め神官は有翼人の存在を下に見ていた。
なら、美しい翼を持っていたら違うのか。
その答えについて、彼等は「否」と、返すだろう。相手の外見が美しく神々しいものであったとしても、彼等は決して認めようとはしない。自分達の考えに間違いがないものと信じ、それをプライドの支えとしていき続けているので、今更訂正できるほど彼等の器は大きくない。
(そう、やはり……)
ナーバルは、ひとつの結論に至る。邪魔と思っているのなら、その存在自体を排除すればいい。この大地に生きている価値などないのだから、存在自体消滅しても何ら問題はない。それに消滅してくれれば人間が暮らす地域を広げることができるので、一石二鳥である。
女神に仕える神官らしからぬ邪悪な思想に、ナーバルの表情だけではなく心も歪んでいく。「血だけではなく、肉も求める」まさにレグナスが危惧していたことが現実として訪れようとし、これにより人間社会の崩壊を誘発させることを今のナーバルは気付いていなかった。
◇◆◇◆◇◆
フィル王子に連れられ、フィーナが向かったのは城の書庫だった。ダレスの血の呪縛からの解放の手助けを約束してくれたのだが、フィル王子がいくら勤勉とはいえその方法を知っているわけがなく、二人で書庫に納められている古い本の中から方法を探すことにした。
「さて、どうするか……」
「多いですね」
「人間が書き記した本の大半を収めている。大半が写本だが……それでも、役に立つだろう」
「この本は……」
「ああ、創作の物語だ」
「これ、知っています」
神殿での不自由の生活を紛らわせるということで、ダレスが自身の母親が残した本を貸してくれたことを話す。どれも面白い話ばかりで、この本も彼が貸してくれた本のひとつだと伝えると、最終的には主人公とヒロインが結ばれ幸せになると、寂しそうに語っていく。


