自分で撒いた種は、自分で刈り取れ。
いや、この場合は自分でケツを拭け――か。
神官という立場上、言葉の使い方には気を配っていた。しかし今日に限って、ナーバルは汚い言葉も平気で用いる。どうでもいい相手となった息子に綺麗な言葉を使うだけの価値はなく、汚い言葉が相応しい。だから汚い言葉を平気で持ち入り、息子の存在を否定する。
(……さて)
厄介ごとがひとつ消えても、まだ複数の厄介ごとが残っている。フィーナが、他の種族の者と交流を持っているということ。これにより巫女の血が他の種族に流れるのではないかと、ナーバルは考える。巫女の血は人間だけが使用できる崇高なる物で、薄汚れた者が触れていいものではない。
(排除すべきか)
鬱陶しいと思っているのなら、それを叩き落せばいい。ナーバルにとって、他の種族が人間にあれこれと何も言ってこないのは、人間に逆らっても得策ではないと彼等が考えているのだと予想していた。だから一人二人殺害しようと何も言ってこないだろうと、強気に出る。
ナーバルを含め、神官達は種族間を取り巻く情勢を知らない。彼等は自身の力の大きさを知っているからこそ、傍観者に徹している。また、人間を相手にするに相応しい存在と見ておらず、ちっぽけな生き物の癖に口と態度だけは一丁前――と、他種族の者は失笑する。
自分達は偉大だ。
自分達は優れている。
だから、従え。
それが、彼等の妄想。
何も知らない中で息巻くほど、惨めなものはない。現在のナーバルの姿をダレスやヘルバが見ていたら、そのように表現しているだろう。そして危うい中で保っているバランスは、人間側が攻撃を仕掛けた時点で崩壊する。勿論、安定を願うフィル王子の気持ちも知らない。
彼等は他人を思いやり慈しむ心が欠落している中で、フィル王子の思いが通じることはない。長い年月、血を独占し続けてきた弊害というべきか、神官は所詮名ばかりの存在。女神に祈りに捧げていてもそれが本心かどうか怪しく、ただ血が永遠に齎されればいいと願う。
だから愚かな考えを愚かと認識することができず、それが正しいものだと自己完結する。それが他人より強いのがナーバルで、使えないとわかれば息子も躊躇いもなく切り捨てる。そして今回、ナーバルは邪魔者である有翼人のヘルバを何とかしようと策略を練るのだった。


