新緑の癒し手


 まさか――

 ナーバルは、ひとつの疑惑を抱く。しかしその疑惑が真実だったとしたら、彼の計画が根底から覆ってしまう。それに以前から考えていた、都合のいい別人を捜すのを早めないといけない。まさにこれはナーバルにとっては予期しない出来事であり、落胆の方が大きい。

(あらゆる面で迷惑を……)

 息子の唯一の才能を利用し、神殿内での影響力を強めようとしていたナーバルであったが、その唯一の才能の面も危うい。これさえ利用できないとなれば、セインに何が残っているのだろうか。利用できると思っていたものが利用できないことに、息子の存在価値を見失う。

 そもそも、ナーバルは息子の行動に苛立ちを覚えていた。一族の名前と力を使い、見習いの神官にしてやった。それだというのに息子は毎日のように娼館に通い、娼婦相手に有り余る欲望を発散させている。それも自分自身の稼いだ金で払うのではなく、毎回ツケ払い。

 息子の常人を逸脱した才能を利用するということで、溜まりに溜まったツケを一括で返済したのだが、蓋を開ければこの始末。自分の運の無さを呪いたくもなるが、ここで暴れては見苦しいと知っているのでナーバルはグッと感情を押し留め、計画を再度練り直していく。

 もっと冷静に物事を見極めていたとしたら、早く予想が付いたかもしれない。今更ながら、自分の読みの甘さを嘆く。だが、このようなことがあるとは、ナーバル自身信じたくなかったという気持ちの方が強い。だから、意図的に目を背けていたのではないかと考える。

 それは、息子への愛情か。

 それとも――

 らしくない思考に、ナーバルは身体を震わせ笑う。存在価値が無くなってしまった息子に、一体何を思うというのか。散々苦渋を舐めさせられ、尻拭いもしていた。使えないと判断した今、唯一残されているのは親子の情。それさえも、彼にとってはどうでもよかった。

(折角、最高の地位を用意してやったというのに、それさえも獲得できなかったのは……全く、情けないものだ。私の息子として産まれてきたのだから、もっと期待できると思っていたが、これまでか。まあ、後はどうなっても構わん。一族からも、見捨てられているのだから)

 ナーバルの権力に対しての固執は凄まじい。自分の命令を素直に聞く人物をフィーナの婿とし、同時に権力を奪い取る。裏で神殿の実権を握り、巫女の血を求めやって来る者達から金を巻き上げようとしていた。権力の掌握は彼にとって夢そのもの、だからこそ熱を上げる。