新緑の癒し手


「このようなことを言うのは何ですが、そのことはダレスに直接言った方が宜しいと思います」

「ああ、そうだな」

 本当に罪の意識を持っているというのなら、面と向かって自分自身の口から言った方がいい。その方が相手に誠意が伝わり、反省している気持ちが偽りではないことを示すことができる。的を射た意見にフィル王子は力強く頷くと、共に間違って進む人間を正そうと誓い合った。


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 フィーナがフィル王子と他種族に付いて語り合っている頃、ナーバルは自室で自身の息子のことに付いて頭を悩ましていた。どのように教育を施しても幼少の頃に培った部分を改善するのは難しく、それどころかますます悪化していく。結果、相変わらず「娼婦」の名を出す。

「忌々しい」

 口に出すだけでも汚らわしい名前に、ナーバルは反吐が出る思いがした。この娼婦にあたっては、あらゆる面でナーバルを悩ましている。そのひとつが息子の性癖で、もうひとつはフィーナが有翼人と共に神殿の外へ逃げ出した後、複数の娼婦がおかしな行動を取っていた報告があった。

 多分、彼女達が裏で手引きをしていたのだろう。聖都の出入り口は厳重に警備され、巫女であるフィーナが簡単に外へ出られるわけがない。そして報告では数人の娼婦が警備を行っている兵士を誘惑し、大騒ぎに発展したという。多分、その隙に外へ逃げ出したに違いない。

「馬鹿の癖に、変に頭がいい」

 今回の件は、完全にしてやられた。同等の知識レベルの者にやられたのであれば諦めも付くが、相手が相手だけにナーバルの腸が煮えくり返る。それに誘惑された側は完全に乗り気になってしまい、中には大勢の人間が行き交う道のど真ん中で失態を晒す兵士もいたという。

 馬鹿息子を思い出すような失態に、報告を聞いていたナーバルの表情は常に無表情。しかし怒りを内に治めておくのにも限界があり、報告を聞き終え一人となった後、絶叫をした。そしてその娼婦は息子の人生を大幅に狂わし、今も真昼間から娼婦相手に宜しくやっている。

 ふと、怒りに打ち震えていていたナーバルが、ある点を疑問視した瞬間、急に冷静さを取り戻す。息子セインは、何度も娼婦相手に行為を繰り返している。それだというのに、その上に発展することがない。それは彼女達がプロだからというのもあるが、それだけでは説明が付かない。