フィル王子の民の行く末を心配する気持ちと熱い信念を聞いたフィーナは、どうしてダレスは人間であるフィル王子を敬称付けで呼んでいるのか、その理由を知る。彼が詭弁ではなく真剣に人間の在りようを模索しているからこそ、血を流してまで守り信頼を置いている。
これだけの人物であったら、ダレスの血の呪縛に付いて話してもいいのではないかと、フィーナは考える。相手は一国の王子であり、多くの書物を読む勤勉家。何か情報を知っているかもしれないと、微かな望みに掛けてもいい。しかし、彼との約束があるので話し難い。
どうすればいいか――
自問自答を繰り返しているうちに、いつの間にかフィーナは眉間にシワを寄せていた。いつにない彼女の真剣な表情に、何か答えを出し難い考えを巡らせているのかと読み取ったフィル王子は、答えを出せない悩み事は自分に相談してもいいと優しく声を掛け彼女を励ます。
「で、ですが……」
「言えないことか?」
「ダレスに、何を言われるか……」
「ああ、彼のことか」
「わかるのですか?」
「言葉の端々で、貴女はダレスを心配していた。だからこのように真剣な表情をして考えるのは、彼しかいない」
「フィル様は、頭の良い方です。いえ、フィル様だけではなく、ダレスやヘルバさんも……」
「ヘルバ?」
「有翼人のお名前です」
自分の周囲にいる人物は、全て洞察力が高く頭がいい人物が集まる。だからといって背伸びしても追い付けない彼等の秀才な面に、嫉妬心を抱いているわけではない。ただ、そのような人物に守られている状況に情けなくなってくる。同時に、何もできない無力な人間と気付かされる。
「私は皆様のように、自分で結論を出し行動することはできません。いつも誰かに頼ってばかりで……」
「そのようなことはない。私とて、誰かに相談することはある。自分の意思だけが、全てではない」
寧ろ、頼ってくれた方がいいとフィル王子は話す。頼られているということはその人物を信頼している証であり、逆に頼らなければ不信感を抱いている証拠になる。フィル王子はフィーナに自分を信頼していないのかと尋ね、信頼しているというのなら相談して欲しいと頼む。


