新緑の癒し手


 フィル王子の本音に、フィーナの心臓が強く締め付けられる。懸命に冷静さを失わないように試みるも王子の発言の影響力は強く、動揺は隠し切れない。フィル王子は落ち着きのないフィーナを一瞥した後、再び口を開く。血が、全てを狂わせているのではないか――と。

 本当は種族の垣根を越え、交流を持ちたいと考えている。しかし巫女の血を持ち死の恐怖から解放されている人間は優越感に浸り、自分達から交流の場を提供しようとしない。それでは人間の世界は発展せず、徐々に衰退するのではないかとフィル王子は危惧していた。

「いや、それ以前に他の種族が協力したらどうなるのか。我々が戦ったところで、勝ち目などない」

 その意見にフィーナは、過去ダレスが言っていたことを思い出す。「何故、巫女は一人の子供しか産めないのか」それに対してダレスは、複数の巫女が誕生したら争いに発展するのではないかと持論を唱えていた。そして巫女の血こそが最強の兵器であり、無限に兵を増強できる。

 ぽつりぽつりと語るのは、思い出したダレスの持論。フィーナの話にフィル王子は、最悪な結末を予想したのだろう唇をかみ締める。彼自身、平和な世の中を切望している。だが種族間の抗争に発展すれば平和とは程遠い世界が訪れ、彼の持論の通り巫女は酷使される。

「そうならないようにする」

「できるのでしょうか」

「まずは、対話だ」

「ですがダレスの話では、竜族は人間を嫌っているようです。それにお友達に有翼人がいるのですが、その方の話でも有翼人も人間を嫌っているようで……もうひとつの種族は、わかりません」

「有翼人に、友人がいるのか?」

「元々は、ダレスの親友です。以前、神殿の方に遊びにこられ……その時に、知り合いました」

「そうか、私も会ってみたいものだ」

 有翼人に会って話をし、人間の愚かな言動を詫びたいという。頭を下げいくら詫びの言葉を言ったところで、相手が許してくれるかどうかわからない。逆に「馬鹿にしているのか」と罵倒されるかもしれないが、何もしないで関係を悪化させ続けるよりはいいとフィル王子は笑う。

 一国を背負う役割を担った者が、真剣に種族間の問題を考えている。それだというのに神官は取得権益に躍起になり、物事の本質に目を向けようとはしない。いや、正しくは目を背けているのか。フィル王子はもっと早く状況回復に取り組めば良かったと、後悔の言葉を放つ。