新緑の癒し手


 血の意味は。

 何故、存在するのか。

 フィーナの話に、フィル王子は人間に与えられた血の意味を問う。確かに血によって人間の世界は発展を遂げたが、同時に大事なモノを捨て去ってしまったのではないかと思う。現に神官は本来の神官の役割を果しておらず、欲に塗れた偽者の神官といっていい状況にある。

 特にダレスとの剣の勝負で、一方的に負けたダレスを馬鹿にするかのように笑った者がいい例だ。馬鹿丸出しの醜悪な表情――思い出しただけで感情が昂ぶり、腸が煮えくり返る。あのような者が神官として神殿にいること自体有り得ないもので、世も末だとフィル考える。

「王子様……いえ、フィル様は……」

「うん?」

「も、申し訳ありません。お、おかしなことを……その……殿下は、巫女の血をどのように考えているのでしょうか」

「そのように、慣れない言い方をしなくてもいい。それに貴女の方が、私より偉いのだから」

「そ、そのようなことは……」

「血で、人々を癒している」

「それは、私の意志では……」

 そこまで言いかけ、途中で口許を押さえる。自分は、何を言っているのか――激しい後悔の末に、とんでもないことを言ってしまったことを詫びる。しかしフィル王子はフィーナの本音に激昂することはせず、それどころか採血に耐え続けていることに同情心を持ってくれた。

「怖い?」

「……怖いです」

「そう、それが普通だ」

「最初は、わかりませんでした。ですが神殿で生活していますと、血が人々に及ぼしている影響力の大きさを知りまして……それに神官達の……多くの人が癒されるわけでもないと……」

 その他に、ダレスの出生と現在の在りよう。そして神官の欲に塗れたどす黒い面を見ているフィーナにとって、己の体内に流れる血そのものが恐ろしいものではないかと考えはじめる。

 全ての現況が巫女の血にある今、人間達は血の存在する意味を改めて考え直さなければいけない。また神官達の独占によって、金儲けの道具となってしまっている。このままでは人間は堕落し、今以上に歪んでしまう。そしていつか、人間同士で争うのではないかとフィーナは話す。