新緑の癒し手


 神官にとってダレスは、面倒ごとを片付けてくれる便利で都合のいい道具。また、ダレスが面と向かって文句を言うことをしないので、相手側を増徴させますます付け上がらせる。それに面倒ごとを押し付ける以前に、フィル王子は彼等のダレスに対しての振る舞いも気に掛かっていた。

 そしてフィル王子は、ダレスが竜と人間の血を引く混血児ということを知っていた。それに対しフィーナはそのことを知らないものだと思っていたと話すと、フィル王子は頭を振りながら神殿に集まる者達の噂話から彼の生い立ちと、複雑な立場のことを知ったと話す。

「あの髪の色。緑柱石(エメラルド)の色彩は、巫女以外有り得ない。それに、どのように隠そうとも真実は明るみになってしまう。先代の巫女は、次代の巫女を産めなかった。産んだのは男子で、竜の血を引くおぞましい存在」

「ダレスは、違います」

「そう、あいつはおぞましい存在ではない。本当におぞましいのは、自分のことをわかっていない者」

 意味深い言い方をするフィル王子に、フィーナは首を傾げる。フィル王子曰く、以前から人間のこの世界での立ち位置について考えていたという。この世界は人間の他に、いくつかの種族が存在している。人間はその中の一種類で、ちっぽけで非力な存在といっていい。

 それについてはダレスやヘルバから聞かされていたので、フィーナは納得するように頷き返す。彼女の頷きにフィル王子も頷くと、何処か思い詰めた表情を浮かべながら人間の中に蔓延している「自分が最高の種族」という考えを改めないといけないのではないかと言い、溜息を付く。

「この国の者達の心内を知り、正直言って落胆している。ほんの少しでも他者を思い遣る優しさを持ち合わしているのなら、その者に目を向けて欲しい。ダレスを含め、貴女の身体も心配だ」

「わ、私は……」

「不自由していると言った」

「いえ、側にダレスがいてくれますので。それより、私はダレスの方が心配です。だって……」

「何?」

「ダレスは、辛くても愚痴を言わなかったです。自分の生い立ちで、酷い目に遭っていても」

 フィーナは目元に涙を浮かべながら、ダレスの身の回りで起きた出来事を話していく。彼にとって最大の出来事は、神官達がルキアに対して行なった振る舞いだろう。死体を冒涜し、記録から抹消する。その後、神殿の奥へ葬り去られ誰一人として花を捧げることをしない。