新緑の癒し手


「しかし、本当は此方から出向けば良かった。だが、周囲の者が許してくれない。だから、貴女を城に……」

「そのことは、構いません。一度、お城の中を見てみたいと思っていまして、それに外に出られ……」

「不自由しているのかな?」

「……はい」

「そういえば、ダレスはどうしている? 神殿の中にいると思っていたが、いないというじゃないか。今回、彼ともゆっくりと話したいと思っていたが、何か用事でも押し付けられたのか? 彼等のダレスへの仕打ちは、考えないといけないな。日に日に、度を増していく」

「その……ダレスは……」

 一瞬、ダレスが血の呪縛について悩んでいることを話そうとしてしまうが、寸前で言葉を止める。これについては「話して欲しくない」とダレスに言われているので、勝手に話すことはできない。また、フィル王子がいい人であっても、真実をどう受け止めるかわからない。

 ダレスは竜と人間の間に産まれた子供で、特に母親の血の影響で感情の起伏によって身体が竜の姿になってしまう。特に人間と竜の間の状態の姿を見られることを一番恐れており、フィーナはその姿に対し「綺麗」と言ったが、フィル王子の反応がいいものとは限らない。

 好意を持つ相手を傷付けたくないと、フィーナは「用事を押し付けられた」と、嘘を言う。フィーナの発言にフィル王子は顔を顰めると、神官の普段の態度に嫌気が差しているのか「またか」と囁き溜息を漏らし、今回はどのような用事を押し付けられたのか聞いてくる。

「内容までは……」

「多分、自分達にとって面倒な仕事を押し付けられたのだろう。あの者達は、ダレスを利用している」

「ご存知なのですか?」

「知らないと思った?」

「王子様は普段はお城にいらっしゃいますから、神殿の内情について知らされていないものと……」

「人の噂話ほど、簡単に広がるものはない。神殿は多くの人が集まる場所。すぐに話は広まる」

 特に、悪い話ほど面白いほど早く広がっていくもの。神官がダレスに面倒ごとを押し付けていることなど神殿に出入りしている者なら誰もが知っている事柄であり、今日は何を押し付けられたのかと人々は噂話を行う。結果、お忍びで神殿を訪ねるフィル王子の耳に届く。