新緑の癒し手


 ヘルバは「一度、村に戻り呪縛から逃れる方法を探す」と言い残し、軽く片手を上げダレスのもとを立ち去る。友人とのやり取りで、ダレスは血の呪縛を恐れ悲観してはいけないと気付く。自分の周囲にどれだけ素晴らしい人物がいて、自分に手を差し伸べてくれるのか。

 自分は一人ではなく、支えられている。それがわかった今、恐れることなく第一歩を踏み出してもいい。越えるべきものは複数存在するが、支えてくれる人物がいれば乗り越えることができるのではないかと勇気が湧いてくる。また、立ち止まっていても物事は好転しない。

 なら――

 踏み出す勇気も、時として必要である。

 ダレスは、徐に天を仰ぎ見る。鬱蒼と茂る木々の間から降り注ぐ木漏れ日は優しく大地を照らし、ダレスを含め息とし生けるものに生命の息吹を与える。降り注ぐ日差しはまるでこれから進むべき彼の未来を明るく照らし出しているかのような、そのような印象を受けた。

 血の呪縛を恐れ、進むべき道を模索することさえ諦めていた。しかし種族を超えたあらゆる人物の支えにより、止まっていた時間が動こうとしている。ダレスは自分自身の決意を示すかのように何か小声で呟くと、下草を力強く踏み締めながら湖の側を離れるのだった。


◇◆◇◆◇◆


「この度は、お越し頂き感謝します」

「此方こそ、有難うございます」

 フィル王子に対し、深々と頭を垂れるフィーナ。彼女の恭しい態度にフィル王子は苦笑いをすると、堅苦しい態度を取らないで欲しいと頼む。今回は個人的に話をしたいからということで城に呼んだのであって、恭しい態度を取られ続けては世間話がし辛いと説明する。

「で、ですが……」

「私が王子だからといって、それに相応しい態度を取らないといけないことはない。儀礼等では話は別だが、今回は完全に私用。周囲にとやかく煩く言う者もいないのだから、いつものようにしていて構わない。それに言ったように、堅苦しい態度を取られるのが苦手なんだ」

 神殿の中だけで生活し続けるのは息が詰まってしまうので、たまの気分転換も必要だとフィル王子は彼女の精神面を心配する。だからこのようにフィーナを城に呼び、お茶とお菓子を楽しみつつ他愛のない話を行いたかった。また、巫女の話を聞いて世間の状況を学ぼうとしていた。