「……有難う」
「礼はいいよ。互いに、長い付き合いだ。礼を言われると、こそばゆい。だが、その前にやらないといけないことがある。お前を苦しめている血の呪縛からの解放。その方法を探す」
「術の効力を阻害しているのは、母さんの血。父さんは、相手が巫女でなければ違ったと言っていた」
「方法を探すことは、今後に繋がるんじゃないか。血の呪縛が子供に表れた時に、役に立つ」
「……そうだな」
「嬉しくないのか?」
「正直に言って、いまいち実感がわかない」
ダレスの発言に、ヘルバは納得する。彼は長い年月、血の呪縛から生まれる差別を恐れ感情を封じて生きてきた。その中で自分に好意を持つ人物が現れ、尚且つ将来共に歩くことを夢見ている。また、血の呪縛からどのようにしたら解放されるのか、その方法を探してくれる。
自分もその相手に好意を抱いているのはわかっているが、ダレスは恋愛体験がないので実感するのは難しい。それでも彼女と同じように共に寄り添える将来を夢見る気持ちは変わらず、半竜半人の中途半端な存在の為に一生懸命になってくれるフィーナに感謝をしていた。
「貸しは、大きいぞ」
「わかっている」
「支払い方法は……考えておく」
「簡単なので頼む」
ダレスの懇願に近い言い方に、ヘルバの口許が緩む。貸しに付いてそのように言っているが、今回の件だけは貸しの支払いはしなくていいと考えていた。フィーナと出会ったことにより、幸せを諦めていた友人が別の未来を見付けようとしている。それに血の呪縛を受け入れてくれたことにより、徐々にだが封じていた感情を表面に表すようになってくれた。
以前のダレスは血が通った生き物であっても、別の生き物のようであった。受け答えの中に毒や辛辣な意見が混じることもあったが、相手が友人であっても感情を封じ続けているのはすぐにわかった。しかし、今は違う。一瞬だけであったが、ダレスが微かに笑顔を作った。
まだまだ本当の笑顔とは言い辛いが、感情を封じ続けていたダレスにとっては大きな一歩。これを切っ掛けに喜怒哀楽を表現できればいいと思うが、それはまだ先のことだとヘルバは認識している。いつか、爽やかな笑顔を――そう、ヘルバはフィーナと同等の願いを持つ。


