「お前は……どうする」
「父と同じようにはならない……とは言えない。愛した者を失い、死体を侮辱された。平然といられる方がおかしい」
「なら――」
「その時は、殺してくれ」
「ダレス!」
「それが一番の方法だ。父が村を離れないのは母を思い出し、感情を抑えられなくなるからだ。本当は、母の遺体を村に埋葬したいと思っている。だけど、それを行うには神殿に行かないといけない。しかし、それを行ってしまえばどうなるかは、父が一番わかっている」
愛した者を側に置き、魂の平穏を祈り続けたい。しかし神官達は遺体まで奪い取り、レグナスを追い詰める。そのような者達がいる神殿に、息子が一人でいる。耐えられない現状にレグナスはダレスに帰って来るように言い続けるが、フィーナが側にいる今、それはできない。
「血の呪縛の影響で、父と母を恨んだ。どうして、このような肉体で産まれてきたのだろうと。でも、父と母は愛し合っていた。だから結婚し、子を儲けた。彼女の気持ちを告げられた後、父と母の気持ちがわかった。感情は、時として理屈では説明がつけられないと――」
互いの価値観を認め合い、その者の異なる点を受け入れる。それこそが、種族間の交流の第一歩。それが可能で人間との間に摩擦が生じていなければ、違う者同士の結婚に悩む必要などない。認めず受け入れず――自分を第一に考えている人間こそが、全ての障害だった。
ヘルバは、ダレスの頼みをなかなか受け入れられなかった。友を殺すなど、できるわけがない。だが、友は最強と呼ばれている竜の血を引いている。感情のままで力を振るえば、人間以外にも被害を与えてしまう。だからダレスが言うように、殺すのが最善の方法となる。
「馬鹿だよ」
「フィル王子にも言われた」
「お前はいつも頼らず一人で解決しようとしているのに、こういう役回りだけは任せてくる」
「お前だからだ」
「全く……本当に」
自分を殺して欲しいと頼める人物こそが、真に信頼している人物といっていい。ヘルバは溜息を吐くと、何とも居た堪れない表情を作る。友の願いは叶えてやりたいものだが、今回の頼みだけは即答はできない。それにフィーナが亡くなった時、二人の間に子供がいたらどうするのか。


