新緑の癒し手


 巫女の血だけでは飽き足らず、他の者の血を求めだしている。そのような者達が上に立ち、何も知らない人間に説法しているのだから、人間はいつまでたっても自分が置かれている立場を理解しない。また、自分以外の種族の存在を受け入れようとせず、見下し続ける。

 そのような者達の犠牲にならなくていい。

 そう、ヘルバは友人の身を心配する。当初は、フィーナへの気持ちについて尋ねようと考えていたが、親友の身体に残る傷痕を見ていると状況は生易しい問題ではないと知る。それに今二人が結ばれるようなことがあれば、あの神官達が強硬手段に出るのは目に見えている。

 ヘルバは、フィーナがダレスの血を何とかしようとしていることを話す。それについてダレスは「ああ、やっぱり」と、何処か納得したかのような口調で返事を返してくる。彼の言葉を聞いたヘルバは、ダレスに彼女と将来どうしたいのか尋ね、真意を聞き出そうと試みる。

「彼女は将来を夢見ている」

「お前は?」

「俺は……」

 フィーナの本心を聞いた時、血の呪縛によって支配されている身体と両親を恨んだ。その後、冷静になってあの時の自分の状況を客観的に見ても、自分は彼女に好意を抱いていたことわかる。しかし彼女のように将来を夢見られる状況ではないと、ダレスは現実を知っていた。

「愛しているんだ」

「悪いか?」

「悪い……とは言い難い。状況を考えれば、反対するのが普通だ。一緒になったところで、不幸になるのはわかっている。わかっていながら、祝福はできないだろう? たとえ血の呪縛を克服しても、彼女の側には神官がいる。だけど、彼女と一緒にさせたいという思いもある」

 癒しの巫女として縛られた運命の中で生きていかないというのなら、愛する者と添い遂げるのが一番いい。フィーナに好意的な意見を言い続けるヘルバに、ダレスは何かあったのか問う。いつも冷静な友人の焦ったような言い方に苦笑すると、友人として付き合うことになったと話す。

「友人?」

「いけないか?」

 友人の予想外の切り返しに、ダレスは言葉を失う。ただ口許をほんの少し緩めると「別に」と言い、タオルと同じように枝にかけてあった衣服を手に取り、着替えだす。ダレスの一瞬見せた変化にヘルバは驚くも、フィーナが友人にいい影響を与えているのだと気付く。