ヘルバは友人の性格を熟知しているので、自分が置かれている状況を理解していると考えるが「恋愛は盲目」という言葉が存在するので、油断していると何を仕出かすかわからない。
血の呪縛を恐れ、長い年月特定の人物以外と交流を持つことを拒み続けていた。今、悩み続けてきたものを素直に受け入れ、それでも共にいたいと申し出いる人物がダレスの目の前に現れた。
ましてやその者は同性ではなく異性。それにより相手に特別な感情を抱かないわけではなく、積み重ねられた年月の反動という言い方は大袈裟だが、その可能性がないわけではない。
もしダレスが互いを不幸にする誤った選択をするというのなら、全力を持って止めないといけない。それは友人としての優しさであり、フィーナ以上に彼の側にいて相談にも乗っているヘルバの役割そのものであった。しかしそうならないことを願う心も、片隅に残っている。
悲惨な現状を知っているからこそ、友に歩むべき人物と本当の幸せを掴んで欲しいと思う。できるものなら互いを縛り付ける現況が失われることが一番だが、それは女神の御心次第。ただひとつ言えることは、巫女の血そのものが不幸な人物を生み出しているということだった。
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フィーナが王子の使者に連れられ城に向かったことを確認したヘルバは、ダレスが一定の期間身を隠している例の森の中の存在する建物に向かった。だが建物の中にはダレスの姿はなく、何処かで何かをしているのだろうと思ったヘルバは友人の姿を求め森の中を捜す。
幸い、当てがないわけではない。ヘルバはダレスがこの場所で身を隠している時、どのような所に行くか大体の予想は付けられる。いくつか候補の場所を導き出すと、森の中では飛行が無理なので徒歩でその候補地を当たってみる。すると、二箇所目の候補地に友人はいた。
ダレスがいた場所は、森の奥に存在する満々と水を湛える小さい湖。この湖は底に散らばっている小石が目視できるほど透明度が高く、多くの小魚が悠々と泳ぐ生命に溢れた湖だ。また鏡のように美しい湖面は木漏れ日を反射させ眩しく輝き、一瞬ヘルバの視界を奪う。
ダレスは湖の側の草陰で、一体何をしているのか。不明な行動にヘルバはそのように尋ねようとするが、何も纏っていない状態で髪から水滴を滴らしているダレスの姿から状況を察する。そして、一言「邪魔だったか?」と言葉を放ち、必要だったら後で来ると続ける。


