新緑の癒し手


 また、ヘルバは堅苦しい場所は好まない。時折、神殿に顔を出すのはダレスがいるからで、それ以外の理由で顔を出すことはない。また今回はそのダレスとの約束があるので、フィーナの側にいる。しかし彼女の友人になると約束したので、訪れる理由が増えたとヘルバは喜ぶ。

 ダレスの友人であるフィル王子を信用していないわけではないが、ヘルバはフィーナに身の安全を図るように促す。真に心を許せる人物以外、隙を見せてはいけない。また「巫女様」と呼び持ち上げてくる人物の真意を見定め、その言葉が本音かどうか見極める能力を高めるべきと言う。

 真剣そのものの言い方は一種の「過保護」に近いものであったが、神官を含め人間の裏の面を目撃しているヘルバにとって、ダレス同様にフィーナの身を心配してしまう。現に彼が信頼している人間はごく一部で、今のところ娼館の女将や娼婦の面々しか認めていなかった。

「わかりました」

「ちょっと、口煩かったな」

「いえ。そんなことはありません。ヘルバさんは私のことを心配しているから、そのように言って下さると思っています。ダレスにも言われましたが、私は巫女で普通の人間と違います」

「そう言ってくれると、助かるよ。で、何かあったらその王子様に助けを求めればいい。相手は、一国の王子だ。下手に手出しできないし、しようとも思わないだろう。身の安全は図れる」

「そうします」

「今回のことは、あいつに言っておく。途中で戻って来て、君がいなかったら驚くだろうから」

「宜しくお願いします。それと、ダレスが困っているようでしたら手助けしてやって下さい」

「あいつは、幸せ者だな。こうやって、想ってくれる人がいるんだから。まあ、自覚はしているだろう」

 勿論、ヘルバはダレスとフィーナが二人っきりでどのような話をしていたか知らないが、二人が戻って来た時の雰囲気で大体は察しが付いた。両想いの一歩手前まで発展した関係だが、ヘルバが不安視しているように二人の間に乗り越えないといけない壁は複数存在する。

(さて、あいつは……)

 ダレスの顔を見に行くついでに、そのあたりを尋ねようとヘルバは考えていた。この恋は、片方が熱を上げていては成立しない。彼等は普通のカップルとは違い、背負っている物が大きすぎる。また、日頃の冷静さを失っていないかどうか確認の意味も込められていた。