人間にとって、過ぎたるものである癒しの血。その力は世界の統治バランスを崩し、彼等に優越感に与える。世界の安定と平和は幻に等しく、これから先も人間は自分達以外を見下す。
これについて、女神は――
やはり、応えようとはしない。
◇◆◇◆◇◆
数日後、神殿にフィル王子の使者が訪ねて来る。使者が訪れた理由は、フィル王子がフィーナと話したいというものだった。一度、お忍びで神殿にやって来たことがあるが、流石に何度もお忍びというわけにはいかないので、王子自身がフィーナを城に呼ぶことにした。
フィル王子の誘いにヘルバは王子の性格を知らないので、フィーナに王子の性格を尋ねる。彼の尋ねにフィーナは笑顔を作ると、フィル王子はヘルバが心配するような人物ではないと話す。またダレスの血の呪縛は知らないが、彼の立場を理解する数少ない人物と付け加える。
「友人?」
「そう、言っていました」
「ダレスと友人関係を築いているということは、いい王子なんだろう。その者が王位に就いたら……」
ヘルバの言葉は最後まで発せられることはなかったが、フィーナは彼が何を言いたかったのか理解していた。フィル王子のように特定の人物を差別することなく、相手の本質を見抜き付き合う。
王子という地位を考えれば他者と対等に付き合うのは難しいが、神官のように表面だけを見て物事を判断することはしない。だからフィル王子は王位を継ぐに相応しい人物であり、特に人間以外の種族が暮らすこの世界では彼のような人物が上に立たないと対立に発展する。
「なら、ダレスのもとへ行くか」
「一緒に行かれないのですか?」
「呼ばれたのは、君だけだ。それに、俺が一緒に行っても迷惑になるだけだ。いくら王子様が物分りでいい人でも、周囲が何と思うかわからない。今、波風を立ててもいいことはない」
ヘルバの意見に、フィーナは納得したかのように頷く。確かに彼が言っているように、有翼人が城に行ってもいいことはない。それどころか迫害の対象となってしまい、ヘルバの気分を害する。それなら最初から行かない方が彼の身の安全が図れ、嫌な思いをしないで済む。


